ハミルトンとタウランガ——オークランドから逃げた人が移る地方都市
オークランドの住宅価格高騰から逃れて、ハミルトンやタウランガに移住する人が増えている。地方都市の実態と、移住者の生活コスト・仕事事情を掘り下げる。
この記事の日本円換算は、1NZD≒92円で計算しています(2026年5月時点)。為替は変動するので、現地通貨(NZD)の金額を基準にしてください。
NZの人口の約3分の1がオークランドに住んでいる。そしてオークランドの住宅価格中央値は約$950,000(約8,740万円、2024年時点)。平均世帯年収の10倍を超える。東京の感覚で言えば、平均的な家庭が都心のマンションを買えない状態に近い。
この価格から逃れるように、人々が南へ移動している。最大の受け皿がハミルトン(Hamilton)とタウランガ(Tauranga)だ。
ハミルトン——オークランドから車で90分の現実解
ハミルトン(人口約18万人)はワイカト地方の中心都市で、オークランドから車で約90分。住宅価格の中央値は約$700,000(約6,440万円)で、オークランドより約25%安い。
ハミルトンの経済基盤は農業と教育だ。ワイカト大学があり、周辺の酪農地帯との結びつきが強い。IT企業やスタートアップも少しずつ増えているが、雇用の選択肢はオークランドと比べると限られる。
リモートワークの普及がハミルトンへの移住を後押しした。オークランドの企業に勤めながらハミルトンに住む「通勤移住者」と「完全リモート移住者」が増えている。ただし、物理出社が必要になった場合の片道90分は簡単ではない。高速道路(State Highway 1)の渋滞は朝夕に深刻だ。
タウランガ——リタイア組と若い家族が混在する港町
タウランガ(人口約16万人)はベイ・オブ・プレンティ地方の港町で、NZで最も人口増加率が高い都市の一つだ。温暖な気候(NZとしては)と美しいビーチが魅力で、リタイア層に人気がある。
住宅価格の中央値は約$800,000(約7,360万円)。オークランドより安いが、ハミルトンより高い。近隣のマウント・マウンガヌイ(Mount Maunganui)は特に人気が高く、ビーチフロントの物件は$1,500,000(約1億3,800万円)を超えることもある。
タウランガの課題は雇用だ。港湾・物流・果樹園(キウイフルーツの生産が盛ん)が主要産業で、ホワイトカラーの仕事は少ない。「住みたい街ランキング」では常に上位だが、「働きたい街」としてはランクインしない。
地方移住の現実
オークランドからの移住で生活コストは下がるのか。住宅費は確かに下がる。しかし、それ以外のコストは必ずしも安くない。
食料品・日用品: スーパー(Countdown、New World、Pak'nSave)の価格はNZ全国でほぼ均一。地方だから安いということはない。
交通費: 公共交通が弱いため、車が必須。1世帯2台持ちが一般的で、ガソリン代・保険・WoF・Regoの維持費がかかる。
医療: 地方ではGPの空きが少なく、専門医にかかるにはオークランドまで出向く必要があることがある。
教育: 小中学校は地元にあるが、大学進学で子どもがオークランドやウェリントンに出ることになると、下宿費用が発生する。
日本人にとっての選択肢
在留日本人の大半はオークランドに集中している。日本食材の入手、日本人コミュニティ、日系の医療機関はオークランドに偏っている。ハミルトンやタウランガに移住すると、これらのリソースから離れることになる。
一方で、「日本人コミュニティに頼らない生活」を望む人にとっては、地方都市の方が現地社会に溶け込みやすいという面もある。オークランドでは日本人同士で固まりがちな人が、地方に引っ越して初めて地元のキーウィ(NZ人)と深い付き合いができたという話は珍しくない。
住む場所の選択は「何を優先するか」の選択だ。住宅コストを取るか、利便性を取るか、コミュニティを取るか。NZは小さな国だが、その中でも都市と地方の差は想像以上に大きい。