築50年の家に住むリスク|ニュージーランドの耐震補強と住宅の地震対策
ニュージーランドは地震大国だが、住宅の多くは木造で耐震基準が日本より緩い。2011年のクライストチャーチ地震後に進む耐震補強の現状と、住宅購入・賃貸時の確認ポイント。
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2011年2月のクライストチャーチ地震(M6.3)では185人が死亡した。このうち115人がCTVビルの倒壊による犠牲者だ。日本人28人も命を落とした。
地震大国であるはずのニュージーランドで、なぜこれほどの被害が出たのか。答えは建物にある。
木造住宅の耐震性
ニュージーランドの住宅の約90%は木造だ。日本と同じく地震国なのに、木造住宅の耐震基準は日本ほど厳しくない。
ニュージーランドの建築基準法(Building Code)はNZS 3604という規格に基づく。一般的な木造住宅はこの規格に従って建てられるが、日本の建築基準法の「耐震等級」のような段階的な評価制度はない。
1970年代以前に建てられた住宅は、現行基準を大きく下回っている場合がある。特に基礎(foundation)が弱い物件が多い。日本のように「新耐震基準(1981年以降)」のような明確な区切りがないため、築年数だけで判断しにくい。
Earthquake-Prone Building(地震脆弱建物)
2017年の法改正で、商業ビルや集合住宅を対象とした「Earthquake-Prone Building(EPB)」の判定制度が導入された。NBS(New Building Standard)の34%未満の耐震性能しかない建物がEPBに指定される。
EPBに指定された建物のオーナーには、15〜35年以内(地域のリスクレベルにより異なる)に耐震補強するか解体する義務がある。ウェリントンでは多くの商業ビルがEPBに指定され、補強工事が進行中だ。
ただし、一般の木造住宅はEPBの対象外。自分が住んでいる家の耐震性は、自分で確認する必要がある。
住宅購入時の確認ポイント
ニュージーランドで住宅を購入する場合、Building Inspection(建物検査)を購入前に行うのが一般的だ。費用はNZD500〜1,000(約4万6,000〜9万2,000円)程度。
検査項目に「耐震性能」は標準的には含まれていないが、追加費用で構造エンジニアの評価を依頼できる。特に以下の点を確認した方がいい。
- 基礎の状態: ジャッキアップされた基礎か、コンクリートスラブか。古い物件はパイル(杭)基礎で、腐食や傾きがある場合がある
- ブレーシング: 壁の中の筋交い(bracing)が現行基準を満たしているか
- 接合部: 柱と梁の接合がボルトで固定されているか、釘だけか
賃貸物件の場合
賃貸の場合、耐震性に関する情報提供は義務化されていない。ただし、Healthy Homes Standards(健康住宅基準)として断熱・暖房・換気・湿気対策・排水の5項目が義務化されている。
地震への備えとしては、家具の固定(earthquake straps)、非常用持ち出し袋(grab bag)の準備、地元のCivil Defenceの避難計画の確認が基本だ。
日本人の感覚とのギャップ
日本で暮らしてきた人がニュージーランドの住宅に住むと、窓のサッシの薄さ、壁の軽さ、床下の隙間風に驚くことが多い。地震の際にこの家で大丈夫なのか、という不安は自然な反応だ。
実際のところ、軽量木造は地震の揺れに対して柔軟に動く性質があり、倒壊よりも内装の破損で済むケースが多い。2016年のカイコウラ地震(M7.8)でも木造住宅の倒壊による死者はゼロだった。
リスクはゼロではないが、木造住宅の柔軟性はある種の「受動的な耐震性能」として機能している。