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ニュージーランドのインターネット事情——光回線が来ない地域で暮らす現実

NZの光回線カバー率は約87%。残り13%の地域ではワイヤレスや衛星回線に頼る。通信インフラの地域格差と、料金・速度の実態を解説。

2026-05-01
インターネット光回線通信地方リモートワーク

この記事の日本円換算は、1NZD≒92円で計算しています(2026年4月時点)。為替は変動するので、現地通貨(NZD)の金額を基準にしてください。

日本にいると「インターネットが来ていない場所」を想像するのは難しい。NTTのフレッツ光は全国99%以上をカバーしている。ニュージーランドでは事情が違う。光ファイバー(Ultra-Fast Broadband・UFB)のカバー率は約87%。残り13%の世帯——約10万世帯——は光回線が物理的に届いていない。

UFBプロジェクトの現在地

NZ政府は2009年にUFBプロジェクトを開始し、全国に光ファイバー網を敷設してきた。総投資額はNZD 37億(約3,400億円)以上。主要都市部はほぼカバーされ、オークランド、ウェリントン、クライストチャーチでは光回線を選べない住所の方が珍しい。

問題は「最後の13%」だ。南島の山間部、北島の東海岸、離島のグレートバリア島やワイヘキ島の一部など、人口密度が低い地域にはファイバーを引くコストが回収できない。1世帯にファイバーを引くのに、都市部ではNZD 1,000〜2,000のところ、過疎地ではNZD 10,000以上かかることがある。

光回線の料金と速度

光回線が使えるエリアの料金体系は日本と比べるとやや高い。

プラン速度月額
ベーシック50MbpsNZD 75〜85(約6,900〜7,800円)
スタンダード300MbpsNZD 90〜100(約8,300〜9,200円)
プレミアム900Mbps〜NZD 110〜130(約10,100〜12,000円)

日本のフレッツ光(1Gbps・月額約5,000〜6,000円)と比較すると、NZは同等の速度で約1.5〜2倍の料金だ。ただし、データ容量は無制限が標準になっており、速度制限のかかるプランは2020年頃にほぼ消えた。

主要プロバイダーはSpark、Vodafone NZ、2degrees、Orcon、Skinnの5社。価格競争はそれなりに機能しており、プロバイダー間の乗り換えは違約金なしで可能だ。

光が来ない地域の選択肢

ワイヤレスブロードバンド

4G/5Gの電波を使った固定代替回線(Fixed Wireless Access・FWA)。SparkやVodafoneが提供しており、月額NZD 70〜100で下り50〜100Mbps程度。電波状況によっては夕方のピーク時に10Mbps以下に落ちることもある。ビデオ会議が途切れるレベルだ。

RBI(Rural Broadband Initiative)

政府が過疎地向けに整備した無線ブロードバンド。タワーから各世帯にワイヤレスで接続する。カバレッジは改善されているが、速度は下り10〜30Mbps、上り5〜10Mbps程度で都市部の光回線とは大きな差がある。

Starlink

SpaceXの衛星インターネット。NZでは2022年からサービスを開始し、過疎地のゲームチェンジャーになっている。初期費用NZD 599(約5.5万円)の受信機を購入し、月額NZD 159(約1.5万円)で下り50〜200Mbps。光回線の2倍近い月額だが、場所を選ばないという圧倒的な利点がある。

実際にサウスランド地方の牧場でStarlinkを使っている人の話では、「それまでADSL 5Mbpsだったのが100Mbpsになった。世界が変わった」とのこと。Netflixが観られるようになっただけでなく、リモートワークが可能になり、都市部の企業に就職できたという例もある。

リモートワーカーにとっての判断基準

NZに移住してリモートワークを考えている場合、住む場所を決める前にその住所の回線状況を確認することは必須だ。Chorus(NZの光回線インフラ会社)のウェブサイトで住所を入力すれば、その地点にFibre・VDSL・ADSLのどれが来ているかを確認できる。

Zoomの推奨帯域幅は上下3.8Mbps(1080pの場合)。ADSL 5Mbpsの環境ではギリギリだ。ワイヤレスブロードバンドのピーク時低下を考慮すると、安定してリモートワークができるのは光回線エリアかStarlinkに限られる。

日本人が知っておくべきこと

NZのインターネット契約に日本の携帯キャリアのような「2年縛り」は基本的にない。1ヶ月単位で契約・解約できるプランが多い。引っ越し時にプロバイダーを変えることも容易だ。

ただし、光回線の開通工事には2〜4週間かかることがある。入居日にインターネットがないという事態を避けるため、賃貸契約が決まった段階でプロバイダーに連絡しておくといい。

NZの通信環境は「都市部は普通に快適、地方は要確認」の一言に尽きる。日本のように「どこに住んでも高速回線が当たり前」ではないことを前提に、住む場所を選ぶ必要がある。そしてその不便さの向こう側に、NZの地方が持つ圧倒的な自然環境がある——通信速度と引き換えに手に入れるものの価値を、どう測るかは人による。

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