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KiwiSaverで家を買う——初回住宅購入の引き出しルールと注意点

ニュージーランドのKiwiSaverは退職用の貯蓄制度だが、初回住宅購入時に引き出せる特例がある。日本人在住者が使えるケースと手続き、落とし穴を実用的に解説。

2026-05-20
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この記事の日本円換算は、1NZD≒92円で計算しています(2026年4月時点)。為替は変動するので、現地通貨(NZD)の金額を基準にしてください。

ニュージーランドのKiwiSaverは退職後の生活資金を貯める年金制度だが、1つ大きな例外がある。初めて住宅を購入する場合、積み立てた資金を引き出せる。

住宅価格が上昇し続けるNZで、KiwiSaverの早期引き出しは頭金の確保手段として広く使われている。オークランドの住宅中間価格が約950,000NZD(8,740万円)の市場で、この制度は多くのFirst Home Buyerの命綱だ。

引き出しの条件

KiwiSaver First Home Withdrawalの主な条件は以下の通り。

  • KiwiSaverに3年以上加入していること
  • 初めての住宅購入であること(過去に住宅を所有したことがない、または所有していたが一定の条件を満たす場合)
  • 購入する物件に自分が居住すること(投資用物件は不可)
  • 引き出し後、口座に最低1,000NZD(92,000円)を残す必要がある

つまり、KiwiSaverの残高が50,000NZD(460万円)なら、最大49,000NZD(451万円)を頭金に充てられる。

First Home Grant(補助金)との併用

KiwiSaver加入者で一定の所得基準を満たす場合、Kainga Ora(旧Housing New Zealand)からFirst Home Grantを受けられる。

  • 既存住宅の購入: 最大5,000NZD(46万円)/人
  • 新築住宅の購入: 最大10,000NZD(92万円)/人
  • カップルなら2人分: 既存住宅で最大10,000NZD、新築で最大20,000NZD

所得基準は単身で95,000NZD/年以下、2人以上で150,000NZD/年以下(2025年時点)。物件価格の上限も地域別に設定されている。

日本人在住者の注意点

KiwiSaverへの加入資格

NZの税居住者(Tax Resident)で18歳以上であれば、Work Visa保有者でもKiwiSaverに加入できる。PRや市民権は不要だ。ただし、NZを離れる場合は一定の条件で引き出しが可能になる(オーストラリアへの移住を除き、永住的な出国の場合)。

帰国リスク

KiwiSaverから住宅購入のために引き出した後、数年でNZを離れることになった場合、住宅を売却してもKiwiSaverに戻す義務はない。しかし、住宅の売却損が出た場合にそのリスクは自己負担だ。

NZ不動産市場は2020〜2021年に急騰した後、2022〜2023年に10〜15%下落した。市場のタイミングによっては、KiwiSaverを引き出して購入した住宅が値下がりし、退職用の貯蓄と住宅価値の両方を失うリスクがある。

手続きの流れ

  1. KiwiSaverプロバイダーに「First Home Withdrawal」の申請フォームを提出
  2. 売買契約書(Sale and Purchase Agreement)のコピーを添付
  3. プロバイダーが条件を確認し、弁護士(Solicitor)のトラストアカウントに直接送金
  4. 処理に通常10〜15営業日かかる

売買契約のSettlement Date(決済日)に間に合うよう、早めに申請することが重要だ。

KiwiSaverを住宅購入に使うべきか

引き出すことで退職後の資金が減る。これは将来の自分から借りる行為だ。

一方、NZでは家賃が上昇し続けており、持ち家の方が長期的な住居費を固定できるメリットがある。「家賃を払い続けて退職後にKiwiSaverで暮らす」vs「KiwiSaverを使って今家を買い、住宅ローンを退職前に完済する」——どちらが有利かは、金利・住宅価格・家賃・KiwiSaverのリターンの各変数に依存する。

正解はないが、少なくとも「KiwiSaverで家が買える」という制度の存在を知っているかどうかで、選択肢の幅が変わる。

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