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マヌカハニーの9割は偽物?——ニュージーランドの蜂蜜産業が抱える信頼の危機

世界で流通するマヌカハニーの量はNZの生産量を大きく上回るとされる。認証制度、科学的根拠、価格の裏側にある産業構造を解説します。

2026-05-17
マヌカハニー食品偽装UMF養蜂ニュージーランド

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日本のデパートで1瓶NZ$80〜$150(約7,360〜13,800円)で売られるマヌカハニー。健康効果を謳う高級食品として世界中で人気だが、この産業には厄介な問題が付きまとっている。世界で「マヌカハニー」として販売されている蜂蜜の総量が、ニュージーランドの実際の生産量をはるかに超えているという指摘だ。

マヌカハニーの科学的な特徴

マヌカ(Leptospermum scoparium)はNZとオーストラリアに自生する低木で、その花蜜から作られる蜂蜜にはメチルグリオキサール(MGO)という抗菌物質が含まれている。これが通常の蜂蜜にはない抗菌活性を持つとされ、ワイカト大学のピーター・モラン博士の研究(1991年)がその基礎を築いた。

医療用途としては、傷口の治療に使われるメディカルグレードのマヌカハニーが実際に病院で採用されている。ただし、食べて体内に摂取した場合の健康効果については、科学的なエビデンスはまだ限定的だ。「風邪に効く」「免疫力が上がる」といった主張は、厳密な臨床試験で確認されたものではない。

UMFとMGO——認証制度の仕組み

品質を保証するために、NZでは主に2つの等級システムが使われている。

UMF(Unique Manuka Factor): NZマヌカハニー認定協会(UMFHA)が管理する認証制度。UMF5+、10+、15+、20+と数字が大きいほど抗菌活性が高い。UMF10+以上が「アクティブマヌカハニー」として健康効果を訴求できるラインとされる。

MGO: メチルグリオキサールの含有量を直接示す数値。MGO100+、250+、500+など。

NZ政府は2018年に「マヌカハニー」の輸出定義を厳格化し、DNA検査と化学成分検査をクリアしなければ「マヌカハニー」として輸出できないようにした。この規制はNZ産については機能しているが、問題は国外での表示規制だ。

偽物問題の構造

2012年、英国食品基準庁が市場に出回るマヌカハニーの成分を調査したところ、マヌカの花蜜に由来する成分が検出されない製品が多数あったと報告された。「マヌカブレンド」「マヌカ入り」といった曖昧な表記で、実際にはほとんどマヌカ成分が含まれていない製品が流通している実態が浮き彫りになった。

NZ国内の年間マヌカハニー生産量は約1,700〜2,500トンとされる。一方、世界で「マヌカハニー」として販売されている蜂蜜は年間約10,000トンに上るという推計がある。この数字の差が、偽物問題の規模を物語っている。

NZ国内ではどう買えばいいか

NZに住んでいるなら、本物のマヌカハニーを適正価格で入手できる。スーパーマーケットでもUMF認証付きの製品が日本の輸入価格の半分以下で買える。

選ぶときの基準はシンプルだ。UMFまたはMGOの認証マークがあること、NZ産であること、製造元が特定できること。ファーマーズマーケットで養蜂家から直接買うのも確実な方法で、マヌカの花がいつ、どこで咲いたかまで教えてくれることが多い。

マヌカハニー産業の今後

偽物問題は産業全体の信頼性を損なうリスクがあるが、NZ政府と業界団体は認証制度の強化と国際的な商標保護に動いている。「マヌカ」という名称をNZ産に限定する地理的表示(GI)の取得を目指す動きもある。

蜂蜜1瓶の裏側に、科学と商業と国際法が複雑に絡み合っている。NZに住んでいると、スーパーの棚に並ぶマヌカハニーの見え方が変わってくる。

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