マオリの土地権——ニュージーランドが今も向き合う問い
ワイタンギ条約から185年以上が経つ。マオリの土地返還と賠償を求める交渉は今も続いており、NZの政治・法律・開発に影響を与え続けている。現在の土地権問題の実態。
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1840年に締結されたワイタンギ条約は、マオリ(先住民族)と英国王室の間の合意文書だ。マオリ語版と英語版で内容に差異があり、土地の「所有権(sovereignty)」をめぐる解釈の違いが、以来185年以上にわたって続く紛争の種になった。
マオリは土地の「管理権(rangatiratanga)」を保持すると理解し、英国側は「統治権(sovereignty)」を得たと解釈した。この食い違いが、19世紀の大規模な土地収用の法的正当化に使われた。
ワイタンギ審判所(Waitangi Tribunal)は1975年に設立され、ワイタンギ条約違反の申し立てを調査・勧告する機関として機能している。ここへの申し立てによって、複数の大規模な土地・漁業権の返還交渉が実現してきた。
交渉の結果として、複数のイウィ(マオリの部族)が政府との「テ・ケレメ(Treaty settlement)」を締結し、土地・現金・資産の返還を受けた。ワイカト・タイヌイ(1995年)やンガイ・タフ(1998年)の和解は大規模なもので、それぞれ数億NZドル相当の資産が返還された。
ただし土地返還は単純な「土地を戻す」ではない。現在すでに宅地・農地・公共施設として使われている土地を元の所有者に返すことは現実的でなく、多くの場合は金銭補償や国有地の移譲という形を取る。
都市開発、海洋資源、鉱山開発——これらのプロジェクトで「その土地にマオリの権利がないか」を確認するプロセスが必要になることがある。RMA(資源管理法)の下では、開発許可の審査でマオリの文化的・精神的な関係(パパティプア、wāhi tapu)への影響を考慮することが求められる。
2023〜2024年、連立政権(国民党・ACT党・NZファースト党)が条約原則を再定義しようとする動きが出て、マオリコミュニティと支持者による大規模な抗議活動(ヒキオイ)が起きた。「条約から生じる特権を縮小しようとしている」という批判と、「全国民の平等を保証すべき」という主張がぶつかった。
マオリの土地権問題は「過去の話」ではない。ニュージーランドの不動産を買う、自然公園でトレッキングをする、海岸でビジネスを始める——それぞれの行為の背後に、この問いが今も通底している。