ボラカイ島の閉鎖と再開発——楽園はどう生まれ変わったか
2018年、ドゥテルテ大統領が「汚水が流れる下水道」と批判したボラカイ島を6か月間閉鎖。世界的リゾートの環境再生プロジェクトの実態。
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ボラカイ島(Boracay Island)は長らく「アジアで最も美しいビーチ」のひとつとして知られてきた。白い砂浜とターコイズブルーの海は、年間200万人以上の観光客を引き寄せていた。
2018年4月、ドゥテルテ大統領はその島を「汚水が流れる下水道(cesspool)」と表現し、6か月間の島全体閉鎖を命じた。
閉鎖の理由は具体的だった。急成長した観光業に下水処理インフラが追いつかず、未処理の排水がビーチ近辺の海に垂れ流されていた。ビーチ沿いには環境基準を無視した違法建設物が林立し、観光客数に見合った水・電力インフラも整備されていなかった。
閉鎖中、約36,000人の島内従業員と店舗・ホテル関係者が一時的に仕事を失った。政府は支援金と再就職プログラムを提供したが、生活への打撃は大きかった。
6か月間の閉鎖中に行われた主な整備は以下の通りだ。
違法建築物の撤去(数百棟規模)、新しい下水処理施設の建設、ビーチ沿いの道路整備と歩行者空間の拡充、電力・水道インフラの更新。島の西海岸(ホワイトビーチ)はリゾートエリアとして、東海岸(ブラボービーチ)は主に農業・住宅エリアとして用途を分けるゾーニングも強化された。
2018年10月に再開した島は、確かに以前より清潔になった、という評価が多い。砂浜に違法な屋台が並ぶ光景は減り、夜間の砂浜立ち入りも制限された。
ただし課題は残った。閉鎖後も違法建築の問題は完全には解消されておらず、観光客数が再び増えるにつれて環境負荷は高まった。コロナ禍(2020〜2022年)で観光業が壊滅的打撃を受けた後、復興に向けた観光客誘致が再び環境対策との競合を生んでいる。
ボラカイの事例は、フィリピン観光業の成長モデルへの問いかけでもある。短期的な観光収入を優先するか、持続可能な管理で長期的な資産価値を守るか——この問いはボラカイだけでなく、パラワン、シアルガオ、コロン島など他のリゾートエリアにも共通する。
ボラカイは今も美しいビーチであることに変わりない。ただ、「楽園」は自然にそこにあるのではなく、意思決定と管理によって維持されるものだという現実を、この島の歴史は教えている。