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フィリピンのクラスD/E経済——GDPに映らない人口の6割の経済活動

フィリピンの人口の約60%を占めるクラスD/E層(月収PHP 10,000〜25,000以下)。彼らの消費行動、sari-sari・パリパリ・ティンギ経済の構造を読み解きます。

2026-05-24
フィリピン経済格差sari-sari消費

この記事の日本円換算は、1PHP≒2.7円で計算しています(2026年4月時点)。為替は変動するので、現地通貨(PHP)の金額を基準にしてください。

BGCのカフェでPHP 200(約540円)のラテを飲んでいるとき、歩いて10分のところにPHP 5(約14円)のコーヒーを飲んでいる人がいる。フィリピンの経済は、GDPの数字だけでは見えない。

クラスA〜Eの社会階層

フィリピンの市場調査では、所得に基づいて世帯をA/B/C/D/Eの5段階に分類するのが一般的だ。

  • クラスA/B(富裕層・上位中間層): 人口の約2〜3%
  • クラスC(中間層): 約30〜35%
  • クラスD(庶民層): 約50%
  • クラスE(貧困層): 約10〜15%

クラスD/Eの月収はPHP 10,000〜25,000(約27,000〜67,500円)以下が目安。この層が人口の約6割を占めている。

ティンギ(tingi)経済

クラスD/Eの消費行動を理解する鍵が「tingi(ティンギ)」だ。タガログ語で「小分け」を意味する。

シャンプーをボトルで買わず、1回分のサシェ(小袋)をPHP 5〜10(約14〜27円)で買う。コーヒーも3-in-1のスティック1本ずつ。洗剤も1回分。sari-sariストア(個人商店)は、まさにこのティンギ需要に応えるために存在する。

日用品メーカーはこの消費構造に適応してきた。ユニリーバ、P&G、ネスレのフィリピン法人はサシェサイズの製品をラインナップの中心に据えている。

なぜティンギなのか

単に「貧しいから」では説明がつかない。1本PHP 150(約405円)のシャンプーボトルを買えば、サシェ30個分(PHP 5×30=PHP 150)と同量が手に入る。むしろボトルの方が割安だ。

しかし、クラスD/Eの世帯は日払い(daily wage)で収入を得ていることが多い。月収が安定していないため、「今日の手持ちで今日必要なものを買う」行動が合理的になる。ボトル1本分のキャッシュを持っていないのではなく、それを「今」使えないことが問題なのだ。

フィンテックとクラスD/E

GCash(Globeの電子決済)とMaya(旧PayMaya)の普及は、クラスD/E層にも浸透しつつある。銀行口座がなくてもGCashで送金・支払いができるため、sari-sariストアの仕入れ決済にGCashが使われるケースも増えている。

フィリピン経済の「見える部分」はBGCのガラス張りオフィスビルだが、「動かしている部分」はsari-sariストアのカウンター越しにサシェを手渡す取引だ。PHP 5の取引が1日に何百万回も繰り返されることで、GDP統計の外側に巨大な経済圏が回り続けている。

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