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マニラのコンドミニアム供給過剰——空室だらけなのに建て続ける不動産市場の構造

マニラ首都圏のコンドミニアム空室率は約25%、在庫の消化に8年以上。それでも建設が止まらない理由を、市場データと業界構造から読み解きます。

2026-05-01
コンドミニアム不動産マニラ

この記事の日本円換算は、1PHP≒2.7円で計算しています(2026年4月時点)。為替は変動するので、現地通貨(PHP)の金額を基準にしてください。

マニラ首都圏のコンドミニアム空室率は、2025年末時点で24.7%。4戸に1戸が空いている計算になる。未販売の完成在庫はPHP 1,580億(約4,266億円)に達し、現在の販売ペースでこの在庫を消化するには8.2年かかるとColliers Philippinesが試算している。

それでもクレーンは止まらない。

数字で見るマニラの在庫問題

2024年の未販売在庫は前年比77%増。販売戸数は9,000戸で、2017年以来の最低水準だった。

地区別に見ると、状況は極端に分かれている。

地区空室率(2025年Q4)
Bay Area(マニラ湾岸)57.3%
Fort Bonifacio(BGC)約20%
Makati CBD約18%
Ortigas Center6.4%

Bay Areaの57.3%という数字は異常に見えるが、ここにはPOGO(オフショア・オンラインゲーミング)企業が大量に入居していた物件が含まれる。2024年にPOGOが全面禁止されて退去が進み、一気に空室が噴出した。

なぜ建て続けるのか

「売れないのに建てる」のは非合理に見えるが、フィリピンのデベロッパーにとっては合理的な行動でもある。

プリセリング(完成前販売)モデルが根幹にある。フィリピンのコンドミニアムは着工前から販売を開始し、購入者は建設期間中(通常3〜5年)に分割で頭金を支払う。デベロッパーは建設前にキャッシュを確保できるため、完成時の市況が悪くても資金繰りは回る。

大手デベロッパー(Ayala Land、SM Prime、DMCI等)は自社で土地を保有しており、建設を止めると土地の遊休コストが発生する。「建てて売る」サイクルを維持すること自体が、企業価値の源泉になっている。

OFW送金マネーという需要の柱

フィリピンの不動産需要を下支えしているのが、海外フィリピン人労働者(OFW)からの送金だ。OFWの送金額は年間約US$370億に達し、GDPの約9%を占める。

OFWの多くは海外にいながらフィリピン国内の不動産を購入する。「将来帰国したときのため」「家族の住居として」「投資として」——動機は様々だが、実際に住むのは購入から数年後というケースが多い。結果として「買ったが空いている」物件が市場に滞留する。

価格は下がるのか

Colliersは2025〜2026年にかけてメトロマニラの地価が2〜5%下落すると予測している。ただし、コンドミニアムの販売価格は簡単には下がらない。

理由のひとつは、デベロッパーが値下げよりもプロモーション(家具付き、管理費無料期間、分割条件の優遇等)で対応する傾向があること。表示価格を下げると、既存購入者との関係で問題が生じるためだ。

在住日本人にとっての意味

空室率が高い時期は、賃貸市場では借り手に有利な交渉ができる。特にBGCやMakatiの高層コンドミニアムでは、家賃交渉や契約条件の交渉に応じるオーナーが増えている。

一方、投資目的でのコンドミニアム購入は慎重に考えた方がいい。外国人はフィリピンの土地を所有できないため、コンドミニアムの区分所有が不動産投資の主な手段になるが、現在の空室率と在庫消化ペースを見る限り、短期でのキャピタルゲインは期待しにくい。

空室率24.7%の街で新築物件が次々と立ち上がる風景は、矛盾のように見える。しかし、プリセリングモデルとOFW送金マネーという2つの構造を知ると、「止められない」理由が見えてくる。フィリピンの不動産市場は、住む人の需要ではなく、買う人の資金フローで動いている——という見方もできる。

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