フィリピンの薬局チェーンが医療の入口になっている
Mercury Drug、Watsons、Rose Pharmacy——フィリピンの薬局は処方薬もOTCも、サプリも日用品もそろう。医療インフラが手薄なエリアで薬局が最初の相談窓口になる実態。
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フィリピンで熱が出た夜、最初に向かう場所は病院ではなく薬局だ。ショッピングモールの中にも、路地沿いにも、コンビニ的な密度で「Mercury Drug(マーキュリードラッグ)」「Watsons」「Rose Pharmacy」などのチェーンが展開されている。
薬局の棚には処方薬からOTC(市販薬)まで広範に揃っており、薬剤師が窓口で直接質問に答えてくれる。「熱が38度ある」と伝えれば、解熱剤の選択肢をいくつか説明してくれるのが普通だ。
フィリピンで特徴的なのは、処方薬の扱いだ。法律上は処方箋が必要な薬でも、薬剤師の判断で販売されるケースが実際には少なくない。抗生物質、降圧薬、睡眠薬——本来なら医師の処方が必要なものが、薬局で比較的容易に手に入ることがある。
これは医療インフラの限界と直結している。地方や低所得地域では、医師に診てもらうこと自体が経済的・距離的なハードルになる。薬局が「医療の最前線」として機能せざるを得ない社会的背景がある。
Mercury Drugはフィリピン最大の薬局チェーンで、全国に4,000店舗以上(推定)を展開している。創業は1945年で、フィリピンの薬局チェーンとしては最も長い歴史を持つ。「どこの街にもMercury Drugがある」という安心感はフィリピン人に広く共有されており、「Mercury」はほぼ薬局の代名詞として使われることも多い。
薬の価格は日本より安い傾向がある。ただし、ブランド薬(オリジネーター)とジェネリック薬の価格差は大きく、ジェネリックは非常に安価だ。フィリピン政府はジェネリック薬の使用を推進する政策を長年続けており、薬局でもジェネリックの選択肢を提示することが多い。
外国人居住者がフィリピンの薬局を利用する際の注意点として、自分が常用している薬の一般名(成分名)を事前に把握しておくと便利だ。商品名が日本と異なる場合でも、成分名で対応品を探しやすくなる。
夜中に発熱した子どもを連れて病院の救急に行くのか、それとも深夜まで営業している薬局で解熱剤を買って様子を見るのか——フィリピン在住の親なら一度は直面する選択だ。薬局が医療の最初の接触点になるこの社会構造は、利便性と医療の質のトレードオフを常にはらんでいる。