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南シナ海で漁をする——フィリピン漁師の海域紛争のリアル

フィリピン人漁師にとって南シナ海(西フィリピン海)は生活の場だ。スカボロー礁周辺での中国船との軋轢は、国際政治の話ではなく日々の漁業の問題として存在する。

2026-06-15
南シナ海漁業領土問題

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南シナ海は国際政治の文脈で語られることが多い。しかしルソン島北西部のパンガシナンやサンバレス州の漁師にとって、「西フィリピン海(West Philippine Sea)」は政治的な概念ではなく、父親も祖父も魚を獲ってきた海だ。

スカボロー礁(Bajo de Masinloc)は、マニラから約260キロ西の岩礁群だ。かつてフィリピン人漁師が自由に漁業を行っていたが、2012年以降、中国が実効支配を強め、フィリピン漁船の立ち入りが妨害されるようになった。


2016年、常設仲裁裁判所(PCA)はフィリピンの訴えを認め、中国の主張する「九段線」に法的根拠はないという裁定を下した。しかし中国はこの裁定を「紙くず」と一蹴し、実効支配を続けている。

漁師の証言では、中国海警局の船が水を噴射し、漁具を没収するケースが繰り返し報告されている。傷を負う漁師もおり、漁師組合が政府に保護を求める訴えを出し続けている。


フィリピン政府の対応はアドミニストレーション(政権)によって大きく変わってきた。ドゥテルテ政権(2016〜2022年)は中国との経済協力を優先し、領土問題を正面から取り上げない姿勢を続けた。マルコスJr.政権(2022年〜)は米国との軍事同盟を再強化し、問題を国際社会に積極的に発信する方向に転換した。

しかし外交姿勢がどう変わっても、スカボロー礁周辺の漁師の日常はすぐには変わらない。距離が遠く、リスクがある海域を避けて近海で漁をすれば、水揚げ量が落ちて収入が減る。


「海の問題」を抽象的に語ることは簡単だ。しかしザンバレス州のオロンガポ近辺で小舟を出して毎日漁をしている人々にとって、西フィリピン海の問題は生存に関わる話だ。

国際法、地政学、フィリピン外交——どれも必要な視点だが、漁師の目線から見た問題の重さを、外から入ってきた人間は忘れないほうがいい。

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