ジープニーはフィリピンの魂だった。現代化の波が来た今
フィリピン独特の公共交通・ジープニーは、第二次大戦後のアメリカ軍ジープが原型だ。過剰装飾で鮮やかなボディ。しかし近代化の波でその姿が変わりつつある。
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マニラの街を走るジープニーを初めて見たとき、何かのアートインスタレーションかと思う人もいる。金属のボディにキリスト像、聖母マリア、バスケット選手、アニメキャラクター、派手な文字が貼り付けられ、クロムで縁取られた派手な車が、轟音を立てて走る。
これがジープニー(jeepney)だ。フィリピンを象徴するアイコンの一つだが、その存在が今、転換点に立っている。
ジープニーの起源
第二次世界大戦終結後、フィリピンに残されたアメリカ軍のジープを改造して公共交通として使い始めたのがジープニーの起源だ。車体を延長して後部に向かい合わせのベンチシートを設け、10〜20人が乗れる形に改造した。
当初は廃車を改造して作ったが、その後フィリピン国内でジープニー専門の製造業者が育ち、現在は多くが国産の専門メーカーで製造されている。
乗り方のルール
ジープニーには停留所もなく、料金メーターもない。基本的な使い方:
- 路上で手を挙げて乗る(バスを停めるのと同じ感覚)
- 後ろのドアから乗り込む
- 目的地の近くで「Para!(止まれ!)」と声をかけるか、天井を叩いて合図する
- 料金は最低運賃PHP13(約34円)前後(2026年時点、フィリピン陸上交通監督委員会LTFRBの規制料金)から距離に応じて加算
- 料金は他の乗客を経由して前方の運転手に渡す
運賃の受け渡しを見知らぬ乗客同士が連鎖して行う光景は、フィリピンの「バヤニハン(助け合い)」精神の表れとも言われる。
モダナイゼーション政策の衝撃
フィリピン政府は2017年から「ジープニー近代化プログラム」を推進している。老朽化・排気基準未達の旧型ジープニーを段階的に廃止し、電気・ユーロ4基準準拠の新型に置き換える方針だ。
新型は最低PHP2.8M(約7,280,000円)前後の車両費がかかるとされ、個人経営の運転手には手が出ない価格帯だ。コンソーシアム(組合)形式での運営が推奨されるが、従来の個人経営からの転換を強いられることへの反発は強い。
全国のジープニー運転手が参加するストライキが複数回起き、マニラの交通が麻痺したこともある。
在住日本人とジープニー
マカティやBGC(ボニファシオ・グローバル・シティ)を拠点に生活する在住日本人の多くは、日常の移動にGrabを使い、ジープニーに乗る機会は少ない。
ただし市内の移動コスト削減のために使う人もいる。短距離の移動ならGrabより安く、「フィリピンの日常」を体感できる。英語が通じるため乗り方の確認もしやすい。
文化的な意味
ジープニーのボディアートはそれぞれのオーナーの表現だ。好きな聖人、好きなスポーツ選手、ニックネーム、家族の名前。走る個性として機能してきた。
その個性が政策によって均質な「新型」に置き換えられることへの惜しむ声は、フィリピン国内でも多い。「合理化は必要だが、ジープニーらしさが失われる」という感傷は、文化を大切にするフィリピン人の本音でもある。