ペソとドルの二重経済——フィリピンで送金・決済・貯蓄をどの通貨で行うか
フィリピンではペソとドルが日常的に併用されています。給与受取・家賃支払い・貯蓄をどの通貨で行うべきか、在住日本人向けに整理します。
この記事の日本円換算は、1PHP≒2.7円で計算しています(2026年4月時点)。為替は変動するので、現地通貨(PHP)の金額を基準にしてください。
フィリピンの通貨はペソ(PHP)だ。だが、コンドミニアムの家賃がドル建てで提示されることがある。語学学校の授業料がドルで設定されていることもある。フィリピンは「ペソの国」でありながら、ドルが生活の至るところに浸透している。
なぜドルが浸透しているのか
背景にあるのはOFW(Overseas Filipino Workers / 海外就労フィリピン人)の送金だ。2023年のOFW送金額は約375億ドル(BSP: Bangko Sentral ng Pilipinas発表)。フィリピンのGDPの約8〜9%に相当する。
この大量のドルが国内に流入することで、フィリピン経済は事実上のドル・ペソ二重構造になっている。銀行にはドル預金口座が普通にあり、不動産取引はドル建てが珍しくない。
在住日本人の通貨選択
給与受取
現地採用の場合、給与はペソ建てが一般的だ。日系企業の駐在員は円建て+現地手当(ペソ)の二本立てが多い。フリーランスや個人事業主は、クライアントの通貨(円・ドル・ペソ)で受け取りが分かれる。
家賃支払い
マカティやBGCの外国人向けコンドミニアムでは、家賃がドル建てで提示されることがある。ただし実際の支払いはペソで行い、支払い時のレートで換算するケースが多い。契約時に「固定レート」か「変動レート」かを確認する必要がある。
貯蓄・資産保全
フィリピンのインフレ率(年3〜6%)を考えると、ペソのまま銀行に預けておくと実質的に目減りする。フィリピンのペソ定期預金の金利は年3〜5%程度で、インフレと相殺される。
在住日本人の選択肢:
- ドル預金: BDO、BPI等の大手銀行にドル口座を開設。ドル定期は年4〜5%程度
- 日本への送金: Wise等を使って円で日本の口座に送金。為替手数料が最小限
- ペソ建て投資信託: UITFと呼ばれるフィリピンの投資信託。ペソ建て・ドル建てから選べる
送金手段の比較
日本→フィリピン、またはフィリピン→日本の送金手段:
| 手段 | 手数料目安 | 着金速度 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| Wise | 0.5〜1% | 即日〜1営業日 | レートが良い。オンライン完結 |
| 銀行間送金(SWIFT) | PHP 1,000〜2,000 + 中継銀行手数料 | 2〜5営業日 | 高額送金向き |
| GCash/PayMaya | 少額無料 | 即時 | フィリピン国内の個人間送金 |
GCashの存在感
フィリピンの日常決済で欠かせないのがGCash(ジーキャッシュ)だ。スマートフォンの電子ウォレットアプリで、フィリピン国民の7割以上が利用しているとされる。
サリサリストア、タクシー(Grab)、公共料金の支払い、個人間送金——ほぼ全ての日常決済がGCashで完結する。外国人でもフィリピンの携帯番号とIDがあれば開設可能だ。
GCashのレートは銀行より若干不利だが、利便性は圧倒的だ。「現金もカードも要らない」生活が、フィリピンではすでに実現している。