Kaigaijin
海外在住日本人のメディア
経済・ビジネス

POGOが消えたあとのフィリピン不動産——オフショアギャンブル禁止令の衝撃波

フィリピン政府が中国人向けオンラインカジノ(POGO)を全面禁止。マニラの不動産市場、コンドミニアム空室率、BPO産業への波及を分析します。

2026-05-24
フィリピンPOGO不動産カジノ経済

この記事の日本円換算は、1PHP≒2.7円で計算しています(2026年4月時点)。為替は変動するので、現地通貨(PHP)の金額を基準にしてください。

マニラ首都圏のオフィス空室率が2024年に急上昇した。原因はPOGO(Philippine Offshore Gaming Operator)の撤退だ。

POGOとは何だったのか

POGOは、フィリピンに拠点を置いて海外(主に中国本土)の顧客にオンラインカジノサービスを提供する事業者の総称。ドゥテルテ政権下で急速に拡大し、ピーク時には300社以上が運営、推定30万人以上の中国人労働者がフィリピンに流入した。

彼らはマニラのコンドミニアムを大量に借り上げ、オフィスビルのフロアを丸ごと使い、不動産市場を押し上げた。

禁止の経緯

2024年、マルコス政権はPOGOの全面禁止を決定した。背景には中国人労働者による犯罪の増加(人身売買、誘拐、詐欺)、中国政府からの外交圧力、そして税収の不透明さがあった。POGO事業者のライセンスは2024年末までに段階的に停止された。

不動産市場への影響

POGOの撤退により、マニラ首都圏のオフィス空室率はエンターテインメントシティ周辺で20%を超えたとされる。コンドミニアム市場でも、POGO労働者向けに高額で貸し出されていたユニットが一斉に空室になった。

BGC(ボニファシオ・グローバル・シティ)やベイエリアのコンドミニアム賃料は、POGO全盛期に1ベッドルームで月PHP 40,000〜60,000(約108,000〜162,000円)まで上がっていたものが、PHP 25,000〜35,000(約67,500〜94,500円)程度まで下がったエリアもある。

BPO産業への波及

POGOが使っていたオフィススペースの一部は、BPO(Business Process Outsourcing)企業が吸収しつつある。フィリピンのBPO産業は約150万人を雇用し、GDPの約7%を占める基幹産業だ。POGO撤退でオフィス賃料が下がったことは、BPO企業にとってはコスト面でプラスに働いている。

ただし、POGOが抜けた穴を完全に埋めるには時間がかかる。BPO企業の拡張はPOGOの急成長ほどのスピードではない。

日本人駐在員・在住者への影響

POGO撤退は在比日本人にとって追い風の面がある。コンドミニアムの選択肢が増え、賃料交渉がしやすくなった。治安面でも、POGO関連の犯罪が減少傾向にある。

一方で、POGO労働者が利用していた飲食店やサービス業が打撃を受け、一部エリアの活気が薄れている側面もある。

都市の不動産市場は、誰がその街に住んでいるかの鏡だ。30万人が一斉にいなくなると、家賃の数字だけでなく、街のテクスチャそのものが変わる。

コメント

読み込み中...