フィリピンの公立学校、1クラス60人という現実
フィリピンの公立学校は無償でも、1クラス60人超・教科書不足・校舎不足が当たり前。私立との格差、日本人が知っておくべき教育環境の実態を解説します。
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フィリピンの公立学校は無償だ。授業料も、入学金も、一切かからない。それだけ聞くと手厚い教育制度に聞こえる。でも現場はかなり違う。
60人が一つの教室に
マニラ首都圏の公立小学校では、1クラスに60人以上の児童が詰め込まれているケースが珍しくない。教室は40人定員で設計されているから、机が廊下にはみ出すこともある。教師1人がこの人数を相手に授業をする。算数を教えながら、後ろで話している子を注意しながら、宿題を採点しながら。
この問題の背景にあるのは教師不足と人口増加のスピードだ。フィリピンの人口は推定1億1,000万人超で、年間出生数は約170万人(推定)。学校の建設と教師の採用がそのペースに追いついていない。
教科書は「あるとき」と「ないとき」がある
公立学校では政府支給の教科書が配られる建前だが、全員に行き渡らないこともある。2〜3人で1冊を共有したり、そもそも自分の手元に置けないので授業中にメモを取るだけ、という状況もある。
学期途中で教科書が届かないまま終わる年もある。保護者が参考書を自腹で買う場合もあるが、低所得層の家庭ではそれも難しい。
私立との格差は大きい
マニラ首都圏の私立学校では1クラス30〜40人程度、エアコン完備、タブレット端末配備というところも増えている。年間学費はピンキリで、庶民向けの私立なら年間PHP 20,000〜50,000(約72,000〜180,000円)、有名校になるとPHP 150,000(約540,000円)を超える。
公立と私立で受けられる教育の質に差があることは、フィリピン国内でも広く認識されている。「良い大学に入るには私立小・中に通わせたほうがいい」という考えが中間層以上では一般的で、収入の多くを教育費に充てる家庭も多い。
日本人家庭の選択肢
フィリピンに長期滞在・移住する日本人家庭が子どもの学校を選ぶとき、公立学校はほぼ選択肢に入らない。言語の問題(授業はフィリピン語と英語)もあるが、それ以前に環境の問題が大きい。
実際に使われているのは、インターナショナルスクール(年間PHP 300,000〜600,000以上)か、日本人学校(マニラに1校あり)かという二択になる。日本人学校はマカティ地区にあり、文部科学省の学習指導要領に準拠した授業が受けられる。
送り迎えと放課後の問題
フィリピンの公立学校は午前と午後の二部制を取る学校が多い。一方が午前7時〜12時、もう一方が午後1時〜6時という具合に分けて使う。これも教室不足の解決策として生まれた仕組みだ。
放課後の治安が不安な地区では、子どもを一人で歩かせない習慣がある。保護者が直接迎えに来るか、家事労働者(ヤヤ)が迎えに行く。これが「ドメスティックヘルパーは必需品」という話と繋がっている。
フィリピンの公立教育の現実を知っておくことは、子連れで移住や長期滞在を考えている人には必須の情報だ。「無償だから大丈夫」という理解だけで動くと、現地に着いてから選択肢が限られることに気づく。