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サリサリストア——フィリピンの路地にある零細商店とコミュニティの絆

フィリピンの路地には必ずと言っていいほどサリサリストアがある。コンビニとも小売店とも違う独特な存在の機能と、コミュニティにとっての意味を整理する。

2026-04-28
フィリピンサリサリストアコミュニティ生活文化

この記事の日本円換算は、1PHP≒2.7円で計算しています(2026年4月時点)。

フィリピンの住宅街を歩くと、すぐ目につく。木製の小屋か家の窓をそのまま改造した小さな店頭に、菓子・飲み物・石鹸・シャンプーの小袋・タバコが並んでいる。これがサリサリストア(Sari-Sari Store)だ。

サリサリストアとは

「Sari-sari」はタガログ語で「いろいろな・様々な」という意味だ。その名の通り、生活必需品を少量ずつ揃えた家族経営の零細小売店舗を指す。

フィリピン統計局(PSA)の推計によると、全国のサリサリストア数は推定80〜100万軒以上とされる(2020年代の推定値)。これはフィリピンの事業所統計で最も多い業態カテゴリの一つだ。

経営者は多くが女性で、家の一部を改造してカウンターを作り、毎朝4〜5時頃から夜11時〜深夜まで店を開ける。初期投資は1,000〜5,000PHP(約2,700〜13,500円)からでも始められるため、低所得世帯の収入源として広く普及している。

「サシェット(sachet)文化」との関係

サリサリストアを語るうえで外せないのが「サシェット(sachet)」だ。シャンプー・洗剤・コーヒー・コンデンスミルク・ケチャップまで、ほぼすべての日用品が1〜2回分の小袋で販売されている。

背景には所得水準がある。まとめ買いの初期コストが払えない低所得世帯にとって、1個5〜10PHP(約14〜27円)の小袋は日々の収支管理手段だ。大容量を買う余裕がなく、必要な分だけを必要なときに買う——この行動パターンとサリサリストアは一体化している。

環境問題としては、この小袋が大量のプラスチックゴミを生み出しているという批判もある。フィリピンは世界有数のプラスチック海洋汚染国とされており、サシェット文化はその要因の一つとして議論されている。

コミュニティハブとしての機能

サリサリストアは物販だけではない。

情報交換の場:誰かが困っているか、何があったか、という地域情報がサリサリストアのカウンター越しに流通する。「〇〇の家に空き部屋があるって聞いた?」「昨日あそこで事故があったよ」——SNS以前の情報流通装置だ。

信用(Utang)システム:常連客はツケで買い物ができる場合がある。Utang(ウタン、借り)という概念がフィリピン社会には根付いており、信頼関係に基づく小額の後払いが成立する。見知らぬ外国人には適用されないが、顔見知りになると融通を利かせてくれることがある。

緊急の用足し:深夜に急にトイレットペーパーが切れた、子どもに解熱剤が必要になった——こういう場面でコンビニより近くにある存在として機能する。

在住外国人との関係

フィリピンの地方や一般住宅街に住む外国人にとって、近所のサリサリストアに顔を出すことはコミュニティとの接点になる。「テ(Teh)」「マノン(Manong)」等の呼びかけで親しく話しかけてくれることも多い。

スーパーで買えるものでもあえてサリサリストアで買うことで、地域の経済と顔つなぎに小さく貢献できる。これを義務として考える必要はないが、そういう選択肢があることは知っておく価値がある。

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