タール火山——湖の中の島にある火山、その観光リスク
タール湖の中の島にあるタール火山は世界的に珍しい地形で観光地としても人気。しかし2020年の大噴火が示したように、活火山の隣に暮らすリスクは現実だ。
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マニラから南に約70キロ、バタンガス州に「湖の中の島の中の湖」という不思議な地形がある。タール湖(Taal Lake)の中央に浮かぶタール火山島(Volcano Island)、その頂上にさらに火口湖(クレーターレイク)がある。
この「入れ子構造」の火山はフィリピン人に愛されている観光地で、火山島へのボートツアーや馬に乗って火口を目指すトレッキングが人気を集めてきた。
2020年1月12日、タール火山が噴火した。噴煙は高度約15キロに達し、南方向に広がった灰は2月まで降り続いた。マニラ首都圏でも火山灰が降り、ニノイ・アキノ国際空港が一時閉鎖された。周辺住民約37万人が避難し、農業・観光業への打撃は甚大だった。
タール火山は世界でも危険な活火山のひとつとして研究者から注目されている。過去数百年で複数回の大規模噴火を起こしており、フィリピン火山地震研究所(PHIVOLCS)が常時監視を続けている。
それでも地元住民は火山島から完全に離れない。噴火前には島内に住民が暮らし、観光業に従事する人も多かった。繰り返される立入禁止・避難命令に対し、戻ってしまう住民の問題は当局にとって長年の課題だ。
なぜ危険な場所に戻るのか。答えは単純で、生活手段がそこにあるからだ。農地、観光の仕事、慣れ親しんだ地域コミュニティ。リスクを知りながら留まる選択は、フィリピンの地方に暮らす人々の現実的な困難を象徴している。
タール火山への観光は2020年噴火後しばらく制限されたが、その後段階的に再開されている。訪問する場合は、PHIVOLCSの最新の警戒レベルを必ず確認することが必要だ。警戒レベルが上がっている期間は立入禁止エリアが拡大されるため、事前確認は必須だ。
フィリピンの火山地帯に住む、あるいは旅行するということは、地球が今も活動中であることを体感することでもある。タール湖のターコイズブルーの水面の下に何があるかを知ってから眺めると、その美しさの意味が変わってくる。