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税金・確定申告

フィリピンの税制——在住外国人の課税ルール。現地収入のみ課税が原則

フィリピン在住外国人の所得税は「現地収入のみ課税」が原則。居住外国人と非居住外国人の区別、日本との租税条約、BIR申告の流れを整理します。

2026-04-09
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この記事の日本円換算は、1PHP≒2.6円で計算しています(2026年4月時点)。為替は変動するので、現地通貨(PHP)の金額を基準にしてください。

フィリピンの税制で最初に押さえるべき点は「課税対象は国籍ではなく居住ステータスで決まる」ということだ。日本国籍の外国人でも、フィリピン国内での収入のみが課税される「resident alien(居住外国人)」扱いになることが多い。

居住外国人 vs 非居住外国人——どちらに当てはまるか

フィリピン税法(National Internal Revenue Code)は、外国人を以下のように区分している。

区分定義課税対象
Resident Alien(居住外国人)フィリピンに居所を持ち、一時的な目的ではなく居住している外国人フィリピン国内収入のみ
Non-Resident Alien(非居住外国人)— 事業従事者特定の年に180日超をフィリピンで過ごした非居住外国人フィリピン国内収入のみ
Non-Resident Alien(非居住外国人)— 非事業従事者180日未満の滞在フィリピン国内収入のみ(源泉徴収25%)

重要なのは、フィリピンでは「居住外国人」でも課税対象はフィリピン国内収入に限られるという点だ。日本の会社から給与を受け取るリモートワーカーや、海外のクライアントからの報酬のみを得るフリーランスは、原則としてフィリピンでの課税対象外になりうる。

ただし「フィリピン国外収入でも課税される」というケースが例外的に存在するため、個別の状況はフィリピン人公認会計士(CPA)または税務アドバイザーへの相談をすすめる。

フィリピンの所得税率(居住外国人・市民共通)

フィリピンの個人所得税は累進税率で、2018年に施行された「TRAIN法(Tax Reform for Acceleration and Inclusion)」により改正された。

課税所得(年間、PHP)税率
250,000以下0%(非課税)
250,001〜400,000超過分の20%
400,001〜800,00030,000 + 超過分の25%
800,001〜2,000,000130,000 + 超過分の30%
2,000,001〜8,000,000490,000 + 超過分の32%
8,000,001以上2,410,000 + 超過分の35%

年収₱250,000(約65万円)以下は非課税となる。月収に換算すると約₱20,833(約5.4万円)で、フィリピン標準の最低賃金水準が非課税ラインに当たる。

BIRへの申告——TINとITR

フィリピンで課税対象になる収入がある場合、まずBIR(Bureau of Internal Revenue、国税庁に相当)でTIN(Taxpayer Identification Number、納税者番号)を取得する必要がある。

年次所得税申告書(Annual Income Tax Return、ITR)は毎年4月15日が締め切りだ。オンライン申告はBIRのeFPS(Electronic Filing and Payment System)またはeBIRForms(電子申告システム)から行える。

フリーランス・自営業者の場合は、四半期ごとの仮申告(Quarterly Income Tax)も必要になる。

VAT(付加価値税)——12%

フィリピンのVATは12%。年間売上高が₱3,000,000(約780万円)を超える事業者はVAT登録が義務となる。未満であればVAT免除(exempt)または非課税事業者(non-VAT)として登録できる。

フリーランスとして活動する場合、クライアントへの請求書発行や領収書(official receipt)の交付義務も発生するため、BIRへの登録と同時に確認しておくことが必要だ。

日本との租税条約

日本とフィリピンの間には「所得に対する租税に関する条約」(日フィリピン租税条約)が締結されており、二重課税の回避が規定されている。主なポイントは以下の通り。

  • 給与所得: フィリピン在住で日本の雇用主から受け取る給与は、一定条件を満たせばフィリピンでのみ課税
  • 配当: 源泉税率の上限が設定されており(通常15%または10%)、条約適用により軽減される場合がある
  • PE(恒久的施設)なし原則: 日本企業がフィリピン国内にPEを持たない場合、事業所得はフィリピンで課税されない

租税条約の適用を受けるには、BIRへの届出や証明書の提出が必要なケースがある。具体的な手続きは日系会計事務所またはフィリピンのCPAへの相談が確実だ。

日本での確定申告との関係

フィリピンに移住しても、日本の税法上の「居住者」に該当し続ける場合は、日本でも全世界所得の申告義務が生じる可能性がある。

「非居住者」になるためには、住民票を抹消し、日本国内に生活の拠点がないことを実態として示す必要がある。フィリピンに移住したつもりでも、日本に住宅を保有し家族が住み続けている場合は「非居住者」と認められないケースもある。

日本の税務署への確認、またはフィリピン・日本の両方をカバーできる税理士への相談を検討する価値がある。

リモートワーカー・フリーランスの扱い

フィリピン国外のクライアントや雇用主から報酬を得ながらフィリピンに滞在するケースは、「フィリピン国内収入ゼロ」として課税されないという解釈が一般的だ。ただしこれはBIRの公式見解というよりも実務上の運用であり、フィリピン当局の判断が変わる可能性もゼロではない。

2024年に導入されたデジタルノマドビザ(MVISA-DN)は、こうしたリモートワーカーの法的地位を明確にすることを目的の一つとしており、ビザの条件として「フィリピン国内での就労禁止」が明記されている。

税制の扱いについてはまだ実務例が積み上がっている段階であり、移住前にフィリピン国内の税務専門家に相談しておくことをすすめる。


主な参照: フィリピン国税庁(BIR)National Internal Revenue Code、TRAIN法(Republic Act No. 10963)、外務省「日本・フィリピン租税条約」

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