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フィリピンの台風対策——毎年20個来る台風と共存する暮らしの知恵

世界で最も災害リスクが高い国フィリピン。年間平均20個の熱帯低気圧が襲来する中、フィリピン人がどう備え、どう復旧しているかを具体的に紹介します。

2026-05-01
台風防災PAGASA

この記事の日本円換算は、1PHP≒2.7円で計算しています(2026年4月時点)。為替は変動するので、現地通貨(PHP)の金額を基準にしてください。

2024年の世界リスク指数(World Risk Index)で、フィリピンは16年連続で「世界で最も災害リスクが高い国」に選ばれた。年間平均20個の熱帯低気圧がフィリピン責任海域(PAR)に入り、そのうち8〜9個が上陸する。2024年10〜11月には30日間で6つの台風が連続して襲来し、1,300万人以上が影響を受けた。

この国で暮らすということは、台風と共存するということだ。

PAGASAの警報システム

PAGASA(Philippine Atmospheric, Geophysical and Astronomical Services Administration)はフィリピンの気象庁にあたる機関。台風の接近に合わせて5段階の警報(Wind Signal)を発出する。

警報レベル風速(10分間平均)意味
Signal No.130〜60 km/h注意。強風の可能性
Signal No.261〜120 km/h警戒。屋外活動は危険
Signal No.3121〜170 km/h深刻。建物の損壊リスク
Signal No.4171〜220 km/h非常に深刻。広域被害の恐れ
Signal No.5220 km/h超壊滅的。最大級の台風

Signal No.2が発出されると、多くの企業や学校が休業・休校になる。Signal No.3以上では避難指示が出される地域がある。

PAGASAは国際名とは別に、フィリピン独自のローカル名を台風に付ける。2024年の台風マンイー(Man-yi)はフィリピンではペピート(Pepito)と呼ばれていた。ニュースやSNSではローカル名が使われるので、在住者はどちらの名前も把握しておく必要がある。

フィリピン人の備え方

フィリピン人の台風対策は、長年の経験から培われた実践的なものが多い。

食料と水の備蓄: 台風シーズン(6〜11月)が近づくと、缶詰、インスタント麺、米、ペットボトルの水を多めに買い置きする。停電・断水が数日から数週間続くことがあるため、最低3日分、できれば1週間分の備蓄が推奨される。

窓の補強: ガラス窓にテープをX字に貼る(飛散防止)、合板で覆う。コンドミニアムの高層階では風圧が強いため、窓際に家具を置かないようにする。

充電と通信: 停電に備えてモバイルバッテリーをフル充電しておく。フィリピンではSNS(特にFacebook)が安否確認と情報共有の主要チャネルになっており、通信手段の確保は生命線に近い。

車両の移動: 洪水リスクのある低地に駐車場がある場合、台風接近前に高台に移動させる。マニラ首都圏では毎回のように冠水する道路があり、パターンは住民の間で共有されている。

冠水——マニラの日常的リスク

強い台風でなくても、マニラでは大雨が降ると冠水が発生する。原因は排水インフラの老朽化と、低地に広がった都市構造。マニラ湾周辺やパッシグ川沿いの地域は特にリスクが高い。

在住日本人がコンドミニアムを選ぶ際、ハザードマップ(flood map)を確認するのは基本だが、フィリピンにはwww.noah.up.edu.phという大学の防災研究機関が提供するオンラインハザードマップがある。地域ごとの洪水リスクを地図上で確認できる。

復旧の速さとレジリエンス

フィリピンで印象的なのは、被災後の復旧の速さだ。台風が過ぎた翌日にはサリサリストア(個人商店)が営業を再開し、路上の倒木を住民が自主的に撤去する。「バヤニハン(Bayanihan)」と呼ばれる相互扶助の精神が、公的な復旧が追いつかない部分を補っている。

一方で、構造的な脆弱性は改善されていない。毎年同じ地域が冠水し、毎年同じ規模の被害が出る。防災インフラへの投資が不足しているのは事実で、台風が来るたびに「備え」よりも「復旧」に資源が費やされるサイクルが続いている。

在住日本人の台風対策チェックリスト

  • PAGASAのサイトとSNS(X/Facebook)をフォローしておく
  • 台風シーズン前に食料・水・モバイルバッテリー・懐中電灯を準備
  • コンドミニアムの管理組合の緊急連絡先を確認
  • 在フィリピン日本大使館のメールマガジン・たびレジに登録
  • 保険(医療・家財)の台風・洪水補償範囲を確認
  • 冠水リスクの高い道路パターンを把握しておく

年間20個の台風は、フィリピンに住む以上避けられない。ただ、「来ることは分かっている」という予測可能性が、この国の台風対策の出発点になっている。予測できるリスクにどう備えるかは、在住者自身の準備にかかっている。

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