フィリピンには活火山が24ある——「環太平洋火山帯の上で暮らす」とはどういうことか
フィリピンは環太平洋火山帯の上に位置し、活火山24、年間の有感地震数は数千回。タール火山の噴火、地震対策、避難計画——日本人だからこそ知っておくべき防災知識。
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日本人は地震慣れしている、と思っている。震度3で「あ、揺れた」と呟き、震度5で「ちょっと大きいな」と立ち上がり、テーブルの下にもぐる。
フィリピンに住むと、その「慣れ」が通用しない瞬間がある。2020年1月、マニラの南約60kmにあるタール火山が噴火した。噴煙は高度14kmに達し、マニラ首都圏に火山灰が降り、空港が一時閉鎖された。100万人以上が避難を余儀なくされた。
フィリピンは日本と同じ環太平洋火山帯の上にある。活火山の数は24。しかし防災インフラは日本とは比較にならないほど脆弱だ。
フィリピンの火山リスク
フィリピンの活火山のうち、特に監視レベルが高いものを挙げる。
| 火山名 | 所在地 | マニラからの距離 | 最近の大きな活動 |
|---|---|---|---|
| タール(Taal) | バタンガス州 | 約60km | 2020年噴火 |
| マヨン(Mayon) | アルバイ州 | 約500km | 2018年噴火 |
| ピナトゥボ(Pinatubo) | サンバレス州 | 約100km | 1991年大噴火 |
| カンラオン(Kanlaon) | ネグロス島 | 約600km | 2024年噴火 |
| ブルサン(Bulusan) | ソルソゴン州 | 約600km | 2022年噴火活動 |
マニラに最も近いのがタール火山だ。タガイタイという避暑地のすぐ隣にあり、湖の中に火山島がある美しい景観で知られる。しかしこの「美しい火山」は、フィリピンで最も危険な火山の一つでもある。
1991年のピナトゥボ山の噴火は20世紀最大の火山噴火の一つで、火砕流と火山灰でクラーク米軍基地が放棄され、800人以上が死亡した。噴火の影響は全世界に及び、地球の平均気温が一時的に0.5°C低下したとされている。
地震のリスク
フィリピンは年間に数千回の有感地震が発生する。フィリピン火山地震研究所(PHIVOLCS)が常時モニタリングしている。
マニラ首都圏を走るウエストバレー断層(West Valley Fault)は、大地震を引き起こす可能性がある活断層として知られている。PHIVOLCSの評価では、この断層がマグニチュード7以上の地震を発生させる可能性がある。
マニラの建物は、日本の耐震基準と比べると弱い。フィリピンの建築基準法(National Building Code)には耐震基準が含まれているが、特に古い建物や違法増築された建物は基準を満たしていないケースが多い。
高層コンドミニアムは比較的新しい建築基準で建てられているため、耐震性はある程度確保されている。ただし「ある程度」であって、日本の免震構造のような高度な技術は導入されていないのが一般的だ。
日本人が取るべき防災対策
日本での防災経験がある分、フィリピンでの対策はスムーズに組み立てられる。
1. 情報源を確保する
| 情報源 | 用途 |
|---|---|
| PHIVOLCS公式サイト・SNS | 火山・地震の速報 |
| PAGASA | 台風・気象警報 |
| NDRRMC(国家災害リスク軽減管理委員会) | 避難指示・被害情報 |
| 在フィリピン日本大使館 | 日本人向け安全情報 |
大使館の「たびレジ」に登録しておけば、緊急時にメールで情報が届く。フィリピン在住の日本人は登録必須だ。
2. 防災グッズの準備
日本では当たり前の防災グッズが、フィリピンでは手に入りにくいものがある。
- 懐中電灯・モバイルバッテリー: 停電が長引くことがある。大容量のモバイルバッテリーは必須
- 飲料水: 最低3日分。フィリピンの水道水は飲めないので、普段からミネラルウォーターのストックを切らさない
- N95マスク: 火山灰対策。2020年のタール噴火時にはマニラでもマスクが必要だった
- 現金: 停電するとATMもGCashも使えない。PHP 5,000〜10,000の現金を常に手元に置く
- パスポートのコピー: 原本は防水ケースに入れて保管
3. 避難ルートの確認
自宅からの避難ルートを事前に確認する。特にコンドミニアムの高層階に住んでいる場合、非常階段の場所と地上までの所要時間を把握しておく。マニラの高層ビルは40階以上のものもあり、エレベーターが止まると階段で降りるのに30分以上かかる。
2020年タール噴火の教訓
2020年1月のタール火山噴火では、マニラから60km離れた場所の噴火にもかかわらず、火山灰がマニラ首都圏に降り注ぎ、空港閉鎖・交通麻痺を引き起こした。最も困ったのは「いつ避難すべきかの判断」だった。日本の気象庁のような詳細な警報に慣れた日本人にとって、PHIVOLCSの情報は粒度が粗く感じられた。一部の駐在員家庭は一時帰国を選んだ。
日本人は地震に慣れている。しかしフィリピンの地震は条件が違う。建物の耐震性が低く、停電が長引き、避難インフラが整っていない。「この揺れなら大丈夫」という身体感覚はリセットする必要がある。環太平洋火山帯の上に住む点で日本とフィリピンは同じだが、「同じリスクを、異なるインフラで受け止めている」という事実は忘れない方がいい。