マニラの水道は2社が分割統治している——断水と民営化の構造
マニラ首都圏の水道はManila WaterとMaynilad、2つの民間企業が東西で分割運営しています。断水リスク、水質、ウォーターサーバー事情を紹介します。
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2019年、マニラ首都圏で大規模な断水が発生した。一部地域では2週間以上水が出なかった。人口1,400万人の首都圏で、水道の供給が途絶える。そんなことが起きる構造が、この街にはある。
東西分割民営化
マニラ首都圏の水道はMWSSI(Metropolitan Waterworks and Sewerage System)が管轄しているが、実際の運営は1997年に民営化され、2つの企業が東西で分割統治している。
- Manila Water(東ゾーン): マカティ、BGC、パシッグ、マリキナ、ケソンシティの東部など。Ayalaグループが出資
- Maynilad(西ゾーン): マニラ市中心部、ケソンシティの西部、カロオカン、ラスピニャスなど。Metro Pacific Investmentsが運営
住んでいるエリアによって水道の供給元が異なり、料金体系も水質も異なる。
水道料金
一般家庭の水道料金は月PHP 300〜800(約810〜2,160円)程度。日本と比べると圧倒的に安い。ただし、この安さは設備投資の不足と表裏一体だ。老朽化した配管からの漏水率(non-revenue water)はManila Waterで約10%、Mayniladで約25%とされる。
飲めるのか
水道水をそのまま飲む在比日本人はほぼいない。Manila Waterは「水道水は飲料基準を満たしている」と発表しているが、配管の老朽化によりタンクや蛇口に到達するまでに水質が劣化するリスクがある。
ほとんどの家庭で以下のいずれかを利用している。
- ウォーターサーバー(water refilling station): 5ガロン(約19L)ボトルをPHP 25〜40(約68〜108円)で補充してもらう。フィリピン全土にrefilling stationがあり、配達もしてくれる
- ボトルウォーター: スーパーで500mLがPHP 10〜20(約27〜54円)
- 浄水器: 蛇口取り付け型やアンダーシンク型。初期費用PHP 3,000〜15,000(約8,100〜40,500円)
断水への備え
乾季(3月〜5月)はダムの貯水量が減り、計画断水(scheduled interruption)が実施されることがある。Manila WaterとMayniladのアプリやSNSで告知されるが、突然の断水も珍しくない。
コンドミニアムにはたいてい屋上にタンクがあり、数時間〜半日程度の断水なら水が出る。ただし長期断水ではタンクも枯渇する。ポリタンクに水を備蓄しておくのは、マニラでは特別なことではなく日常の知恵だ。
蛇口をひねれば水が出る——日本ではあまりにも当たり前のことが、マニラでは「今日のインフラが正常に動いている」ことの確認になる。