蛇口をひねれば水が出ない——フィリピンの水道事情
マニラ首都圏でも水圧が弱い・断水が起きるエリアがある。地方では雨水と買い水に頼る地域も。フィリピンの水問題の現実と、在住者の対処法。
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フィリピンで暮らし始めた日本人が最初に気づく「日本との違い」のひとつが、水だ。蛇口をひねると水は出るが、飲める水かどうか分からない。水圧が弱い時間帯がある。乾季になると断水が起きる地区がある。
「水に不自由するとは思わなかった」という感想は珍しくない。
マニラ首都圏は大きく、マニラ・ウォーター(東部)とメイニラッド(西部)の2社が水道事業を担っている。コンセッション契約で運営されており、エリアによってサービス品質に差がある。
首都圏でも、老朽化した配管・水圧の問題・漏水率の高さは長年の課題だ。乾季(3〜5月)にはダム貯水量が下がり、供給制限や断水が発生することがある。2019年には深刻な水不足が報告され、一部地区で長期間にわたる断水が起きた。
地方の状況はさらに多様だ。都市部の中核エリアでは水道が普及しているが、農村部や離島では水道インフラが整備されていない地域も多い。雨水を集めて生活用水にする、近くの湧き水を使う、給水車から購入する——日本では当たり前の「蛇口をひねれば安全な水」が当たり前でない場所がある。
フィリピン在住者が実際にとる対策はさまざまだ。
飲料水はペットボトルのミネラルウォーターか、給水スタンドで補充する大容量ジャグ(5ガロン≒約19リットル)を使うのが一般的だ。自宅にウォーターディスペンサーを置いて、ジャグを定期的に配達してもらう家庭が多い。
マンションやコンドミニアムには屋上タンク(overhead tank)が設置されていることが多く、深夜〜早朝に加圧して水を貯めてから日中使う仕組みになっているケースもある。
この状況は改善されつつある。政府は「ユニバーサル・アクセス・トゥ・ウォーター・アクト(2019年)」を制定し、安全な水道水へのアクセスを全国民に保証することを目標に掲げている。インフラ整備は続いているが、人口増加と気候変動の影響もあって課題は大きい。
日本人の感覚では「水道から飲める」が標準だが、世界の多くの国ではそうではない。フィリピンで生活するということは、その「標準」を一度リセットする体験でもある。