Kaigaijin
海外在住日本人のメディア
生活・気候

フィリピンの「2つの季節」——乾季と雨季で生活が別物になる国

フィリピンには春夏秋冬がない。あるのは乾季(11〜5月)と雨季(6〜10月)だけ。雨季にはマニラの道路が川になり、乾季には水が止まる。季節が生活を支配する国の暮らし方。

2026-05-11
気候雨季乾季洪水生活

この記事の日本円換算は、1PHP≒2.7円で計算しています(2026年4月時点)。為替は変動するので、現地通貨(PHP)の金額を基準にしてください。

東京に住んでいると、天気予報を見る理由は「傘を持つかどうか」くらいだ。フィリピンでは天気予報が生活を左右する。雨季の豪雨の日にマニラに住んでいると、出勤できるかどうか、帰宅できるかどうか、そもそも家の前の道路が通れるかどうか——すべてが天気次第になる。

フィリピンには「四季」がない。あるのは乾季(Dry Season、Tag-init)と雨季(Wet Season、Tag-ulan)の2つだけだ。

2つの季節の基本

季節時期気温特徴
乾季(前半)11月〜2月25〜31°C比較的涼しい。観光のベストシーズン
乾季(後半)3月〜5月28〜38°C猛烈に暑い。4月が最も暑い
雨季6月〜10月25〜33°C午後にスコール。台風シーズン

3〜5月の暑さは尋常ではない。マニラの4月の平均最高気温は34〜35°Cだが、体感温度は40°Cを超える日がある。湿度が高いため、日本の真夏を上回る不快さだ。エアコンは「あったら便利」ではなく「生存装置」になる。

雨季のマニラ——道路が川になる日

雨季のマニラでは、午後になると突然空が暗くなり、1時間ほどのスコールが降る。毎日ではないが、週に3〜4回は発生する。

問題は、マニラの排水インフラがスコールの水量に対応できないことだ。30分の豪雨で道路が膝まで浸かる場所がある。特にEDSA沿い、マニラ市内のサンパロック地区やトンド地区は浸水の常連だ。

浸水すると交通がマヒする。車はエンジンが水に浸かるため動けなくなる。Grabの車もつかまらない。MRTやLRTは地上を走るため浸水の影響を直接受けにくいが、駅周辺が水没してアクセスできないことがある。

雨季を生き延びるための装備:

  • 防水のスマホケース: スマホを水没させると、Grabも呼べず連絡も取れず詰む
  • ビーチサンダル(tsinelas): 浸水した道路を革靴で歩くと一発で終わる。フィリピン人は雨が降り始めるとビーサンに履き替える
  • 折り畳み傘 + レインコート: 傘だけでは横殴りの雨に対応できない
  • 予備の着替え: オフィスに置いておく。通勤中にずぶ濡れになることがある

台風シーズン

フィリピンは年間約20個の台風が接近・上陸する世界有数の台風大国だ。台風シーズンは6〜12月で、ピークは8〜10月。

台風の強さは、日本で経験するものとは桁が違うことがある。2013年のスーパー台風ヨランダ(国際名: ハイエン)は最大風速315km/h以上を記録し、死者・行方不明者8,000人以上を出した。

マニラ首都圏に直撃する台風は年に数回。台風が接近すると、PAGASA(フィリピン気象庁)がシグナル(Signal No. 1〜5)を発表する。

シグナル風速実質的な意味
Signal 130〜60 km/h注意。普通に生活可能
Signal 261〜120 km/h学校休校。在宅勤務推奨
Signal 3121〜170 km/h外出控える。停電の可能性
Signal 4171〜220 km/h大きな被害。避難が必要
Signal 5220 km/h超壊滅的。全面避難

Signal 2以上が発令されると、多くの企業がwork from home指示を出す。Signal 3以上では外出自体が危険。

乾季の問題——水不足

雨季に降りすぎる雨が、乾季には降らなさすぎる。3〜5月の乾季後半には、マニラ首都圏でも水の供給が不安定になることがある。

2019年にはマニラの水道事業者Manila Waterが供給不足に陥り、一部地域で1日に数時間しか水が出ないという事態が発生した。コンドミニアムの場合、ビルに水槽(water tank)があるため影響は限定的だが、水圧が下がることはある。

乾季のフィリピンでは「水を無駄にしない」が生活の基本になる。シャワーの時間を短くする、洗濯はまとめてやる、車の洗車を控える——日本では意識しない節水が、自然と身につく。

エアコンと電気代

フィリピンの電気料金はアジアで最も高い部類に入る。1kWhあたり約PHP 12〜13(約32〜35円)で、日本と同等か、それ以上だ。エアコンを24時間稼働させると月PHP 8,000〜15,000(約21,600〜40,500円)。設定温度を25〜26°Cにする、インバーター式を選ぶ、扇風機と併用する——この3つで電気代は3〜4割減る。

季節が決める住居選び

住居選びのポイントは気候から逆算できる。高層階(浸水リスク低減)、北向きか東向き(西向きはエアコン代が跳ね上がる)、バックアップ電源あり(停電対策)、水タンク容量が大きいビル(乾季の水不足対策)。

フィリピンの2つの季節は、日本の四季とは異なる種類の「変化」を生活に持ち込む。雨季には物理的に移動できなくなる日があり、乾季には暑さが思考力を奪う。季節に「逆らう」のではなく「合わせる」生活スタイルを早めに身につけることが、フィリピン生活の快適さを決める。

コメント

読み込み中...