フィリピンの「2つの季節」——乾季と雨季で生活が別物になる国
フィリピンには春夏秋冬がない。あるのは乾季(11〜5月)と雨季(6〜10月)だけ。雨季にはマニラの道路が川になり、乾季には水が止まる。季節が生活を支配する国の暮らし方。
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東京に住んでいると、天気予報を見る理由は「傘を持つかどうか」くらいだ。フィリピンでは天気予報が生活を左右する。雨季の豪雨の日にマニラに住んでいると、出勤できるかどうか、帰宅できるかどうか、そもそも家の前の道路が通れるかどうか——すべてが天気次第になる。
フィリピンには「四季」がない。あるのは乾季(Dry Season、Tag-init)と雨季(Wet Season、Tag-ulan)の2つだけだ。
2つの季節の基本
| 季節 | 時期 | 気温 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 乾季(前半) | 11月〜2月 | 25〜31°C | 比較的涼しい。観光のベストシーズン |
| 乾季(後半) | 3月〜5月 | 28〜38°C | 猛烈に暑い。4月が最も暑い |
| 雨季 | 6月〜10月 | 25〜33°C | 午後にスコール。台風シーズン |
3〜5月の暑さは尋常ではない。マニラの4月の平均最高気温は34〜35°Cだが、体感温度は40°Cを超える日がある。湿度が高いため、日本の真夏を上回る不快さだ。エアコンは「あったら便利」ではなく「生存装置」になる。
雨季のマニラ——道路が川になる日
雨季のマニラでは、午後になると突然空が暗くなり、1時間ほどのスコールが降る。毎日ではないが、週に3〜4回は発生する。
問題は、マニラの排水インフラがスコールの水量に対応できないことだ。30分の豪雨で道路が膝まで浸かる場所がある。特にEDSA沿い、マニラ市内のサンパロック地区やトンド地区は浸水の常連だ。
浸水すると交通がマヒする。車はエンジンが水に浸かるため動けなくなる。Grabの車もつかまらない。MRTやLRTは地上を走るため浸水の影響を直接受けにくいが、駅周辺が水没してアクセスできないことがある。
雨季を生き延びるための装備:
- 防水のスマホケース: スマホを水没させると、Grabも呼べず連絡も取れず詰む
- ビーチサンダル(tsinelas): 浸水した道路を革靴で歩くと一発で終わる。フィリピン人は雨が降り始めるとビーサンに履き替える
- 折り畳み傘 + レインコート: 傘だけでは横殴りの雨に対応できない
- 予備の着替え: オフィスに置いておく。通勤中にずぶ濡れになることがある
台風シーズン
フィリピンは年間約20個の台風が接近・上陸する世界有数の台風大国だ。台風シーズンは6〜12月で、ピークは8〜10月。
台風の強さは、日本で経験するものとは桁が違うことがある。2013年のスーパー台風ヨランダ(国際名: ハイエン)は最大風速315km/h以上を記録し、死者・行方不明者8,000人以上を出した。
マニラ首都圏に直撃する台風は年に数回。台風が接近すると、PAGASA(フィリピン気象庁)がシグナル(Signal No. 1〜5)を発表する。
| シグナル | 風速 | 実質的な意味 |
|---|---|---|
| Signal 1 | 30〜60 km/h | 注意。普通に生活可能 |
| Signal 2 | 61〜120 km/h | 学校休校。在宅勤務推奨 |
| Signal 3 | 121〜170 km/h | 外出控える。停電の可能性 |
| Signal 4 | 171〜220 km/h | 大きな被害。避難が必要 |
| Signal 5 | 220 km/h超 | 壊滅的。全面避難 |
Signal 2以上が発令されると、多くの企業がwork from home指示を出す。Signal 3以上では外出自体が危険。
乾季の問題——水不足
雨季に降りすぎる雨が、乾季には降らなさすぎる。3〜5月の乾季後半には、マニラ首都圏でも水の供給が不安定になることがある。
2019年にはマニラの水道事業者Manila Waterが供給不足に陥り、一部地域で1日に数時間しか水が出ないという事態が発生した。コンドミニアムの場合、ビルに水槽(water tank)があるため影響は限定的だが、水圧が下がることはある。
乾季のフィリピンでは「水を無駄にしない」が生活の基本になる。シャワーの時間を短くする、洗濯はまとめてやる、車の洗車を控える——日本では意識しない節水が、自然と身につく。
エアコンと電気代
フィリピンの電気料金はアジアで最も高い部類に入る。1kWhあたり約PHP 12〜13(約32〜35円)で、日本と同等か、それ以上だ。エアコンを24時間稼働させると月PHP 8,000〜15,000(約21,600〜40,500円)。設定温度を25〜26°Cにする、インバーター式を選ぶ、扇風機と併用する——この3つで電気代は3〜4割減る。
季節が決める住居選び
住居選びのポイントは気候から逆算できる。高層階(浸水リスク低減)、北向きか東向き(西向きはエアコン代が跳ね上がる)、バックアップ電源あり(停電対策)、水タンク容量が大きいビル(乾季の水不足対策)。
フィリピンの2つの季節は、日本の四季とは異なる種類の「変化」を生活に持ち込む。雨季には物理的に移動できなくなる日があり、乾季には暑さが思考力を奪う。季節に「逆らう」のではなく「合わせる」生活スタイルを早めに身につけることが、フィリピン生活の快適さを決める。