フィリピン人女性の社会的強さはどこから来るのか
アジアのジェンダーギャップ指数でフィリピンは上位常連国。女性大統領2人、大企業のCEOも女性が多い。その背景にある文化的・歴史的な要因を探る。
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世界経済フォーラムが毎年発表するジェンダーギャップ指数で、フィリピンはアジアの中では上位に入ることが多い。コラソン・アキノ(1986年就任)とグロリア・マカパガル=アロヨ(2001年就任)という2人の女性大統領を輩出し、政財界で活躍する女性も多い。
日本・韓国・中国と比べると、フィリピン社会の女性の立ち位置は明らかに異なって見える。なぜか。
プレヒスパニック期(スペイン支配前)のフィリピン社会には、「ババイラン」と呼ばれる女性シャーマンが宗教的・政治的権威を持つ文化があったとされる。スペイン植民地化によってその権威は抑圧されたが、女性が社会の重要な役割を担うという文化的記憶は残った。
フィリピン語の「ナナ(Nana)」と「タタ(Tata)」はそれぞれ母・父を意味するが、家計管理は伝統的に母親が担う家庭が多い。夫の給料を妻が管理し、予算を決め、子どもの教育に投資する——この財布の主導権が女性側にある構造は、フィリピンの家庭では珍しくない。
教育面でも女性の比率が高い。フィリピンの大学進学率は女性が男性を上回り、医師・弁護士・会計士など専門職の資格試験合格者にも女性が多い傾向がある。家族全体で「賢い子どもを育てる」ことへの投資意識が高く、娘も息子も同様に教育を受けさせる価値観がある。
OFW(海外出稼ぎ労働者)に占める女性の比率も高い。家事労働者・ナース・介護士として海外に出る女性たちの送金が、国内に残る家族の生活を支えている。家族のために海を渡る選択は、フィリピン女性の自律性と責任意識の裏返しでもある。
ただし「フィリピン女性は強い」という像は、すべての現実をカバーしない。農村部での家庭内暴力は依然として深刻な問題で、法的保護が行き届いていない地域もある。カトリック教会の影響から離婚が認められておらず(イスラム法適用のムスリム以外は法律上の離婚が今もできない)、不幸な結婚から抜け出せない女性の問題も残る。
エンターテインメント産業や水商売での搾取問題も繰り返し報告されている。
「アジアで女性が活躍している」という観点でフィリピンを語るとき、職場での地位向上と家庭内での困難を切り離さないことが大切だ。フィリピン女性の強さは現実だが、それは解決済みの話ではなく、今も変化の過程にある。