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アレンテージョ地方——ポルトガルの「忘れられた内陸」に移住する人々

リスボンやポルトから離れたアレンテージョ地方は、ポルトガルの国土の3分の1を占めながら人口密度が極端に低い。この「忘れられた内陸」に外国人移住者が増えている理由と、暮らしの実態。

2026-05-05
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ポルトガルの国土の約3分の1を占めるアレンテージョ(Alentejo)地方の人口密度は、1平方キロメートルあたり約20人。リスボンの人口密度(約5,500人/km2)と比べると270分の1だ。見渡す限りのコルク樫の林、オリーブ畑、小麦畑。夏は40℃を超える日もある。ポルトガル人の間では「何もない場所」というイメージが長く定着していた。

そのアレンテージョに、ここ数年で外国人移住者が増えている。

なぜアレンテージョなのか

不動産価格: リスボン中心部のアパートメントが月€1,200〜2,000(約192,000〜320,000円)する時代に、アレンテージョでは土地付きの一軒家が€100,000〜200,000(約1,600万〜3,200万円)で購入できる。改修が必要な農家(monte)なら€50,000〜100,000(約800万〜1,600万円)で手に入ることもある。

リモートワーク: コロナ以降、リスボンのオフィスに通う必要がなくなった人々が、アレンテージョに移住するケースが増えた。光ファイバーインターネットが整備されている地域も増えており、デジタルノマドにとってはインフラ面の障壁が下がっている。

エコロジカルな暮らし: 自給自足的な暮らし、オフグリッド(電力自給)、パーマカルチャーに興味を持つ北欧やイギリスからの移住者が、アレンテージョの広い土地を活用している。

実際の暮らし

魅力的に聞こえるが、現実は甘くない。

買い物: 最寄りのスーパーまで車で30〜40分という場所がざらにある。週に1〜2回、まとめ買いの生活になる。

医療: 大きな病院はエヴォラ(Évora)やベージャ(Beja)の県庁所在地にしかない。GPに相当する地域の健康センター(Centro de Saúde)は小さな町にもあるが、専門医にかかるにはリスボンまで出向く必要がある場合も。

夏の暑さ: 7〜8月は連日35〜42℃。エアコンなしの古い農家では過ごすのが厳しい。太陽光発電と蓄電池を入れてエアコンを動かす移住者もいるが、初期投資は€5,000〜15,000(約80万〜240万円)程度かかる。

社交: 小さな村では住民の平均年齢が高く、ポルトガル語が話せないと孤立しやすい。若い世代はリスボンやポルトに出ていて、村に残っているのは高齢者が中心だ。

エヴォラ——アレンテージョの中心都市

アレンテージョで「都市」と呼べるのはエヴォラ(人口約5万人)だ。ユネスコ世界遺産に登録された旧市街を持ち、エヴォラ大学があるため学生も多い。レストラン、カフェ、病院、スーパーが揃っており、アレンテージョ移住の「ベースキャンプ」として機能している。

エヴォラの不動産はリスボンより大幅に安い。1ベッドルームのアパートメントが月€500〜800(約80,000〜128,000円)程度。購入なら€100,000〜200,000(約1,600万〜3,200万円)で中心部のアパートメントが手に入る。

アレンテージョの食

アレンテージョの食文化はポルトガルの中でも独特で、素朴だが味わい深い。

アサーダ・アレンテジャーナ(Carne de Porco à Alentejana): 豚肉とアサリの組み合わせ。肉と貝を一緒に料理するポルトガル独特の発想。

ミガス(Migas): パンくずをオリーブオイルとニンニクで炒めた料理。元は残り物の再利用だが、今では郷土料理として提供されている。

ワイン: アレンテージョはポルトガル最大のワイン産地の一つ。赤ワインが主力で、€3〜5でスーパーに並ぶテーブルワインでも十分美味しい。

移住の判断基準

アレンテージョへの移住は、リスボンでの都市生活に疲れた人や、広い土地でプロジェクト(農業、アート、エコビレッジ等)を立ち上げたい人に向いている。一方で、日本食材の入手、日本人コミュニティ、都市的な便利さを求める人には厳しい選択だ。

「何もない」ことが最大の魅力にも最大のストレスにもなる場所。アレンテージョの評価は、移住者が「何もないこと」をどう解釈するかで正反対になる。

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