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アゾレス諸島で暮らすという選択肢——大西洋の真ん中にある楽園と不便さ

ポルトガル領アゾレス諸島への移住を考える人に向けて、生活コスト・気候・交通・医療の実態と、リモートワーカーに人気が出た背景を紹介します。

2026-05-03
アゾレス離島生活リモートワーク移住

この記事の日本円換算は、1EUR≒160円で計算しています(2026年5月時点)。為替は変動するので、現地通貨(EUR)の金額を基準にしてください。

リスボンから西に1,500km。大西洋のど真ん中に、ポルトガル領の9つの島が浮かんでいます。アゾレス諸島(Açores)。人口約24万人。ヨーロッパ本土とアメリカ大陸のちょうど中間に位置する、文字どおり「大西洋の真ん中」です。

なぜ今アゾレスなのか

コロナ禍以降、リモートワーカーの移住先としてアゾレスが注目されました。理由はシンプルです。

  • 家賃がリスボンの半額以下:サン・ミゲル島のポンタ・デルガダで1ベッドルームがEUR 400〜600(約64,000〜96,000円)/月
  • EU圏内:ポルトガルの滞在許可証がそのまま有効
  • 自然環境:火山・温泉・湖・鯨——東京23区の10倍の面積に24万人しかいない
  • 時差:リスボンより1時間遅い。アメリカ東海岸とは4時間差で、米欧両方のクライアントと仕事しやすい

生活の現実

楽園のような写真がSNSに溢れていますが、実際に住むと不便さも見えてきます。

物価:食料品はリスボン本土より10〜20%高い。島への輸送コストが価格に反映されます。牛乳や肉など地元産の食品は本土と同等ですが、輸入品(日本食材を含む)は割高。アジア食材店はほぼ存在しません。

交通:島内はバスがありますが本数が少なく、車がないと生活が成り立ちません。レンタカーは月EUR 400〜600(約64,000〜96,000円)程度。中古車購入のほうが長期滞在には現実的です。

医療:ポンタ・デルガダに公立病院(Hospital do Divino Espírito Santo)がありますが、専門医の診療は待ち時間が長い。緊急度の高い症状はリスボン本土に搬送されることもあります。

インターネット:光ファイバーはポンタ・デルガダ市内であれば利用可能。速度は下り100〜500Mbpsで、リモートワークには十分です。ただし島の中心部を離れると回線品質が落ちます。

9つの島の違い

アゾレスは9島で構成されていますが、暮らす場所として現実的なのは2〜3島に限られます。

  • サン・ミゲル島:最大の島。人口約14万人。空港・病院・大学・ショッピングセンターあり。生活インフラは最も充実
  • テルセイラ島:2番目に大きい。アングラ・ド・エロイズモの歴史地区はユネスコ世界遺産。米軍基地(ラジェス基地)の影響で英語が通じやすい
  • その他の島:ファイアル、ピコ、フローレスなど。美しいが人口数千人規模で、医療・買い物の選択肢が極めて限られます

気候という意外な落とし穴

「温暖な島」というイメージがありますが、アゾレスの天気は1日に四季がある——と在住者は言います。大西洋の気流の影響で天候が急変し、朝晴れていても昼に雨、夕方にまた晴れることが日常です。

年間降水量はリスボンの約2倍。冬はリスボンより暖かい(最低気温13度程度)ものの、夏はリスボンほど暑くならない(最高気温25度前後)。猛暑が苦手な人には快適ですが、「ヨーロッパの島=地中海の青い空」を期待していると、灰色の空に戸惑うかもしれません。

大西洋の真ん中で暮らすということは、便利さと引き換えに、空と海の圧倒的な近さを手に入れるということです。その交換条件を受け入れられるかどうかが、アゾレス生活の分岐点になります。

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