ポルトガルで車を持つ——購入・車検・保険の手続きと、日本との違い
ポルトガルでの中古車購入、車検(IPO)、自動車保険、駐車事情まで。リスボン以外に住むなら車はほぼ必須。日本人が知るべき実務を整理。
この記事の日本円換算は、1EUR≒160円で計算しています(2026年4月時点)。為替は変動するので、現地通貨(EUR)の金額を基準にしてください。
ポルトガルはヨーロッパで最も車の平均車齢が高い国の一つだ。道を走る車の平均年齢は約13年。日本なら廃車寸前の年式が、ポルトガルでは現役で走っている。中古車市場が主流で、新車は「贅沢品」に近い——そんな国で車を持つとはどういうことか。
車が必要な地域、不要な地域
リスボンとポルトの都心部に住むなら、車がなくても生活は成り立つ。メトロ、バス、トラムの公共交通網がそこそこ整っている。月EUR 40の全国交通パス(Navegante Metropolitano)で域内の公共交通が乗り放題だ。
一方、それ以外の地域——アルガルヴェ、アレンテージョ、内陸部——では車がないと生活が成り立たない。スーパーまで車で20分、病院まで30分、公共交通は1日数本。日本の地方と同じ構造だが、ポルトガルの方がさらに公共交通が薄い。
中古車の購入
ポルトガルで車を買う方法は主に3つ。
1. ディーラー(Concessionário): 新車・認定中古車を扱う正規ディーラー。保証付きで安心だが、価格は高め。
2. 中古車販売店(Stand de Automóveis): 個人経営の中古車店。ポルトガル全土に無数にある。価格はディーラーより安いが、品質は店による。
3. 個人売買: OLX(ポルトガル版メルカリ)やStandVirtual(中古車専門サイト)を使った個人間取引。最も安く買えるが、車の状態は自己責任。
中古車の相場感を見てみる。
| 車種 | 年式 | 走行距離 | 価格帯 |
|---|---|---|---|
| VW Golf(ディーゼル) | 2018年式 | 10万km | EUR 14,000〜18,000(約224万〜288万円) |
| Renault Clio | 2019年式 | 8万km | EUR 11,000〜15,000(約176万〜240万円) |
| Peugeot 208 | 2020年式 | 6万km | EUR 13,000〜17,000(約208万〜272万円) |
ヨーロッパの中古車はディーゼル車が多い。燃費が良く、長距離走行に向いている。ガソリン車より購入価格が高いが、燃料費で元が取れる計算だ。
名義変更の手続き
車を購入したら、IMT(Instituto da Mobilidade e dos Transportes)で名義変更を行う。必要書類は売買契約書、車両登録証、NIF、身分証明書。手数料はEUR 55程度。オンライン(IMTonline)でも可能だが、ポルトガル語のみ・電子署名が必要なので、初回は窓口が確実だ。
車検(IPO: Inspeção Periódica Obrigatória)
ポルトガルの車検制度はIPOと呼ばれる。
| 車齢 | 検査頻度 |
|---|---|
| 新車〜4年 | 検査なし |
| 4〜8年 | 2年に1回 |
| 8年以上 | 毎年 |
検査費用はEUR 30〜35(約4,800〜5,600円)程度。日本の車検と比べると格段に安い。ただし、不合格になると修理→再検査のループに入る。古い車が多いポルトガルでは、排ガス検査で引っかかるケースが多い。
検査場は全国のIPO認定センターで受けられる。予約はオンライン(emel.pt等の各地域サイト)で取れる。
自動車保険
ポルトガルで車を運転するには、最低限の対人・対物賠償保険(Seguro Automóvel Obrigatório)が義務付けられている。
| 保険タイプ | 月額保険料の目安 | カバー範囲 |
|---|---|---|
| 最低限(Responsabilidade Civil) | EUR 15〜30(約2,400〜4,800円) | 対人・対物賠償のみ |
| 中間(Terceiros Completo) | EUR 30〜50(約4,800〜8,000円) | 上記+盗難・火災・自然災害 |
| フルカバー(Todo o Risco) | EUR 50〜100(約8,000〜16,000円) | 上記+自損事故 |
保険料は年齢、運転歴、車種、居住地域によって変わる。ポルトガルに移住して間もない場合、現地での運転歴がないため保険料が高くなる傾向がある。
主な保険会社はFidelidade、Allianz Portugal、Tranquilidadeなど。オンラインで見積もり比較ができるサイト(ComparaJá.pt)を使うと便利だ。
駐車と免許
リスボンの駐車事情は厳しい。中心部はEMEL(市の駐車管理機関)がゾーン制で管理しており、路上駐車の料金はEUR 0.80〜1.60/時間。月極駐車場は月EUR 80〜200(約12,800〜32,000円)。ポルトやリスボン郊外なら月EUR 40〜80程度で見つかる。
日本の運転免許はポルトガルの免許に切り替え可能だ。IMTで申請し、日本の免許の公式翻訳(在ポルトガル日本大使館で取得可能)を添付する。移住後最初の半年間は国際運転免許証(IDP)で運転できるので、その間に切り替え手続きを進めるのが一般的な流れだ。
車を持つか持たないかで、ポルトガルでの生活圏は大きく変わる。リスボン都心部に住むなら車なしでもやれる。しかしポルトガルの本当の魅力——アレンテージョの丘陵、アルガルヴェの海岸線、内陸部の小さな村——を味わうには、車があった方がいい。