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ポルトガルの高齢化率はEU4位——「若者が出て行く国」で日本人が見る既視感

ポルトガルの高齢化率は約24%で、EUの中でもイタリア・ギリシャに次ぐ水準。若者の流出と低出生率が重なる構造は日本と驚くほど似ている。

2026-05-11
高齢化人口社会問題若者流出年金

この記事の日本円換算は、1EUR≒160円で計算しています(2026年4月時点)。為替は変動するので、現地通貨(EUR)の金額を基準にしてください。

ポルトガルの合計特殊出生率は1.43(2023年)。日本の1.20よりは高いが、人口維持に必要な2.1には遠く及ばない。65歳以上の人口比率は約24%で、EUではイタリア(24.1%)、ギリシャ(23.6%)に並ぶ高齢国だ。

日本人がポルトガルの田舎を訪れると、奇妙な既視感を覚える。シャッターの閉まった商店街、昼間のカフェに座る高齢者、学校の統廃合——地方の風景が、日本の過疎地と重なる。

若者はどこへ行ったのか

ポルトガルの人口流出は、EU加盟(1986年)後に加速した。特に2008年の金融危機と2011年のEU/IMF融資プログラムの期間中、若年層の失業率が40%近くに達し、大量の若者がイギリス、フランス、ドイツ、ルクセンブルクに出て行った。

2010〜2015年の5年間で約50万人がポルトガルを去ったとされている。人口1,040万人の国から50万人——日本に置き換えると、5年間で600万人が海外に出て行った計算になる。

出て行った若者の多くは大卒だった。医師、エンジニア、看護師——高い教育を受けた人材ほど、EU域内の労働市場で買い手がつく。ポルトガルは教育コストを負担し、その果実を他国が収穫する構造が固定化した。

移民で穴を埋める

2018年頃から潮目が変わった。ポルトガル経済が回復し、観光業が急成長し、ゴールデンビザやNHR税制で外国人を呼び込む政策が功を奏した。

しかし帰ってきたのはポルトガル人の若者ではなく、ブラジル、インド、バングラデシュ、ネパールからの移民だった。2023年のポルトガルの外国人住民は約100万人で、人口の約10%。10年前の4倍以上に増えた。

移民は労働力不足を補い、社会保険料を納め、高齢者の介護を担う。ポルトガルの介護施設(Lar de Idosos)で働くスタッフの多くは移民だ。移民なしでは高齢者の生活が成り立たない——日本が技能実習制度で直面しているのと同じ構造が、ポルトガルにもある。

年金制度の持続性

ポルトガルの公的年金(Segurança Social)は賦課方式。現役世代が払う社会保険料で、現在の年金受給者を支える仕組みだ。

指標ポルトガル日本
高齢化率(65歳以上)約24%約29%
合計特殊出生率1.431.20
年金支給開始年齢66歳7ヶ月(2025年)65歳
平均年金月額EUR 590(約94,400円)約14.5万円(厚生年金平均)

ポルトガルの年金は日本より低い。月EUR 590では、リスボンの家賃(ワンルームEUR 750〜)をカバーできない。年金だけで暮らす高齢者は、家賃の安い内陸部や、家賃凍結法(旧法)で守られた古い賃貸契約に頼っている。

年金支給開始年齢は平均寿命に連動して毎年引き上げられている。2025年は66歳7ヶ月だ。日本の65歳より遅い。

日本との比較で見える構造

日本とポルトガルの高齢化には共通点が多い。

共通点:

  • 出生率がEU/OECD平均を下回る
  • 若年層の都市集中と地方の過疎化
  • 公的年金制度の持続性への懸念
  • 移民・外国人労働者による労働力補充

相違点:

  • ポルトガルは「若者が国外に出る」。日本は「若者が東京に出る」
  • ポルトガルはEU域内の自由移動があるため、人材流出のハードルが低い
  • 日本の方が高齢化が5〜10年先行している
  • ポルトガルは移民受け入れに相対的にオープン

高齢者が「見える」社会

ポルトガルを歩いていると、高齢者の存在感が強い。公園のベンチに座る老人、カフェのテラスでエスプレッソを飲む老夫婦、教会の前で立ち話をする老婦人。公共空間に高齢者が「いる」。

日本の都市部では、高齢者が家の中に閉じこもりがちだという指摘がある。ポルトガルでは、気候の良さもあって高齢者が外に出る。カフェは高齢者のリビングルームだ。

ただし、これは「高齢者が元気だから外に出る」だけではない。一人暮らしの高齢者が、家にいると孤独だから外に出る、という側面もある。ポルトガルの一人暮らし高齢者の割合はEUでも高く、孤独死(morte solitária)は社会問題になっている。

移住先としてのリスク

ポルトガルに移住する日本人にとって、高齢化はどう関係するのか。

直接的には、医療サービスの質と待ち時間に影響する。公立病院は慢性的に混雑しており、高齢患者の増加がそれを悪化させている。専門医の予約が数ヶ月待ちになることもある。

間接的には、税負担の増加リスクがある。年金・医療・介護の費用を賄うために、将来的に増税や社会保険料の引き上げがあり得る。ポルトガルに長期で住む計画なら、この財政リスクは頭の片隅に入れておく必要がある。

ポルトガルの高齢化は、日本人にとって「未知の問題」ではない。むしろ「見たことがある景色」だ。カフェに座る老人の後ろ姿が、日本の祖父母と重なる瞬間がある。高齢化は、国境を超えて先進国が共有する構造問題だ。解決策はまだ、どの国も見つけていない。

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