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ポルトガルの夏の山火事——2017年の悲劇と毎年の備え

ポルトガルは欧州で最も山火事被害が深刻な国のひとつ。2017年の大規模火災の教訓と、在住者が知るべき夏の備えをまとめます。

2026-05-03
山火事防災安全

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2017年6月17日、ポルトガル中部のペドロガン・グランデで山火事が発生し、66人が亡くなりました。犠牲者の多くは車で避難中に炎に囲まれた人々です。この火災はポルトガル史上最悪の自然災害となり、国の防災体制を根本から変えました。

なぜポルトガルは燃えるのか

ポルトガルは欧州で最も山火事被害が深刻な国のひとつです。EU全体の山火事焼失面積の約20〜30%をポルトガル1国が占める年もあります(EFFIS, European Forest Fire Information System)。

構造的な原因が複数重なっています。

気候:地中海性気候の夏は高温・乾燥が続きます。リスボン近郊でも40度を超える日がある。7〜9月は降水量がほぼゼロになる地域も珍しくありません。

ユーカリ植林:ポルトガルの森林面積の約26%がユーカリです。製紙産業(Navigator Company等)向けに大規模に植林されたユーカリは、油分が多く極めて燃えやすい。火災時にはユーカリの樹皮が燃えながら飛散し、数百メートル先で新たな火種になります。

農村過疎化:内陸部の農村人口が減少し、かつて農地だった土地に灌木が繁茂。管理されない植生が燃料になっています。

2017年以降の変化

ペドロガン・グランデの悲劇を受けて、ポルトガル政府は防災体制を大幅に見直しました。

  • AGIF(森林火災管理庁)の設立:火災の予防・管理を統括する専門機関
  • 建物周囲の防火帯義務化:住宅から50m以内の灌木や枯れ木の除去が法律で義務付けられた。違反すると罰金EUR 280〜10,000
  • 緊急警報システム:携帯電話への緊急プッシュ通知が整備された
  • ユーカリ新規植林の制限:2017年以降、ユーカリの新規植林面積が制限された

在住者が知るべき夏の備え

ポルトガルに住む場合、6月〜10月は山火事シーズンです。

日常的な備え:

  • IPMA(気象庁)の火災危険度マップを確認する:5段階で表示され、赤(最高危険度)の日は野外での火気使用が禁止される
  • 112(緊急番号)を覚えておく:消防・救急・警察の統一番号
  • 車のガソリンは半分以上を維持:避難時にガソリンスタンドが混雑・閉鎖する可能性がある
  • 避難経路を事前に確認:内陸部に住む場合、複数の避難ルートを把握しておく

煙と空気質: リスボンやポルトなどの大都市でも、内陸部の山火事の煙が流れ込むことがあります。空気質が悪化した日は窓を閉め、外出を控えるのが基本です。IQAir等のアプリで空気質を確認できます。

火と共存する文化

ポルトガルの農村には「queimada(野焼き)」の伝統があります。冬の間に管理された焼き畑を行い、夏の燃料になる枯れ草を減らす方法です。現代の防火対策でもこの「処方焼き(fogo prescrito)」が再評価されています。

毎年夏が来ると、ニュースに山火事の映像が流れる。消防士(bombeiros)の多くはボランティアで、地域の消防団は夏の間フル稼働します。ポルトガルの夏は、太陽と海だけでなく、火とも隣り合わせの季節です。

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