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ゴールデンビザ終了後のポルトガル不動産|外国人投資マネーが去った街で何が起きているか

2023年にポルトガルが不動産投資型ゴールデンビザを廃止した。家賃は下がったのか、住宅危機は解消されたのか。制度変更後の不動産市場を検証する。

2026-05-21
ポルトガルゴールデンビザ不動産住宅危機投資

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2023年10月、ポルトガル政府は不動産投資を通じたゴールデンビザ(Autorização de Residência para Atividade de Investimento)の新規発行を停止した。50万ユーロ以上の不動産購入で在留許可を得られるこの制度は、2012年の導入以来、約70億ユーロの投資を呼び込んだ。

廃止の理由は明確だった。外国人投資家の流入が不動産価格を押し上げ、地元住民が家を借りられなくなった——というのが政府の説明だ。

だが、制度を止めれば住宅問題は解決するのか。

ゴールデンビザの実績

2012年から2023年までの間に、約1万2,000件のゴールデンビザが発行された。投資総額の約90%が不動産購入。国籍別では中国、ブラジル、トルコ、南アフリカの順に多い。

リスボンのシアード地区やアルファマ地区では、ゴールデンビザ目的の不動産購入が集中し、物件価格が10年で2倍以上になったエリアもある。

ただし、ゴールデンビザ経由の購入は不動産取引全体の1〜2%に過ぎないという指摘もある。価格上昇の主因は、観光ブーム、デジタルノマドの流入、NHR税制(非常居住者税制)を利用した富裕層の移住、低金利時代の投機——複合的な要因が絡み合っている。

廃止後に起きたこと

ゴールデンビザ廃止から2年以上が経過した。不動産市場に劇的な変化は起きていない。

リスボンの住宅価格は2024年も前年比5〜8%上昇を続けた。家賃も下がっていない。廃止されたのはゴールデンビザだけで、他の価格上昇要因は依然として存在するからだ。

むしろ、デジタルノマドビザ(D8ビザ)を利用した外国人リモートワーカーの流入が続いており、短期賃貸市場への需要は維持されている。

NHR税制の廃止とダブルパンチ

2024年にはNHR税制(Regime Fiscal para Residentes Não Habituais)も新規申請を停止した。この制度は、ポルトガルに移住した外国人に10年間の所得税優遇を提供するもので、フランスやスウェーデンの富裕層がポルトガルに移住する大きな動機だった。

ゴールデンビザとNHR税制の同時廃止は、ポルトガルの「外国人富裕層を呼び込む戦略」の終了を意味する。

代わりに導入された「IFICi」(新たな税制優遇)は、対象を高度技能人材や研究者に限定している。金で居住権を買う時代から、スキルで居住権を得る時代への転換。

住宅危機の本質

ポルトガルの住宅問題は、外国人投資家だけが原因ではない。

  • 新規住宅建設の不足: 2008年の金融危機以降、建設セクターが縮小したまま回復していない
  • 賃貸市場の硬直性: 旧法の賃貸契約では家賃が極端に低く凍結されており、大家がリノベーションや新規賃貸に動かないインセンティブがある
  • 観光と住宅の競合: 短期賃貸(Airbnb等)が住宅ストックを吸い上げる構造

ゴールデンビザの廃止は、住宅問題の「顔が見える犯人」を排除した。だが構造的な問題は手つかずのまま残っている。

外国人としてポルトガルの不動産市場に参入するなら、制度変更のタイムラインを注視しつつ、短期的な投機ではなく「住む場所」として物件を選ぶ視点が、結果的に最も堅実だ。

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