リスボンの住民が消えていく|Airbnbと観光化が引き起こす住宅危機
リスボン旧市街の住民が10年で激減した。Airbnbの拡大と観光化で家賃が高騰し、地元住民が郊外に追い出されている。2023年の新規Airbnb許可停止措置の効果は。
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アルファマ地区の窓辺に干された洗濯物。ファドが流れるバー。路地で遊ぶ子供たち。これがリスボンの旧市街の「本来の風景」だったが、今は洗濯物の代わりにAirbnbの鍵ボックスが並ぶ。
2015年から2023年の間に、リスボン中心部のAlojamento Local(短期賃貸許可)の登録数は約3万件に達した。リスボン市内の住宅の約15%が短期賃貸に転用された計算になる。
家賃の高騰
リスボンの平均家賃は2015年から2024年の間に約2倍に上昇した。中心部のワンベッドルームはEUR1,000〜1,500/月(約16万〜24万円)が相場で、最低賃金EUR870では到底払えない。
家主にとっては、月EUR1,000で長期賃貸するよりも、1泊EUR80でAirbnbに出す方がはるかに利回りがいい。月の半分だけ予約が入っても月EUR1,200になる。経済的合理性からすれば、長期賃貸に戻す動機がない。
旧市街の人口減少
アルファマ、モウラリア、バイロ・アルトなどの旧市街地区では、住民人口が10年で20〜30%減少したとされる。もともと高齢者が多い地域で、住民が亡くなったり施設に入ったりすると、空いた物件がAirbnbに転用されるパターンが多い。
残った住民は観光客の騒音、ゴミの増加、物価の上昇に悩まされている。「自分の街が観光テーマパークになった」という表現がたびたび使われる。
2023年の規制強化
2023年11月、ポルトガル政府は「Mais Habitação(もっと住宅を)」法を施行した。主な内容は以下のとおり。
- リスボンとポルトの中心部での新規Alojamento Local許可の停止
- 既存のAirbnb物件への追加市税の導入
- 家主が長期賃貸に転用した場合の税制優遇
この規制は既存の許可を取り消すものではないため、すでに運営中の物件には影響が限定的だ。新規参入を止めることで、これ以上の拡大を防ぐという位置づけにとどまる。
デジタルノマドとの矛盾
一方で、ポルトガル政府は2022年にデジタルノマドビザを導入し、外国人のリモートワーカーを積極的に呼び込んでいる。彼らの多くはリスボン中心部に住みたがり、家賃の高騰要因の一つになっている。
外国からの高収入者を歓迎しつつ、地元住民の住宅問題を解決する。この2つの目標は根本的に矛盾している。
在住者のリアル
リスボンで部屋を探した経験がある在住者なら、この問題を肌で感じているはずだ。内覧に行くと他に10〜20人の応募者がいる。家主は「6ヶ月分の前払い」や「年収の40倍の証明」を要求する。
多くの在住日本人が中心部を諦めて、アマドーラ、アルマダ、オエイラスなどの郊外に住んでいる。naveganteカードがあれば通勤コストは月EUR30で済むので、家賃の安い郊外の方がトータルの生活費は下がる。
観光客のリスボンと、住民のリスボン。同じ街なのに、見えている景色がまったく違う。