リスボンの食——海と大地と植民地の記憶が交差する皿
ポルトガル・リスボンの食文化を在住日本人の視点で解説。バカリャウ・ペテンガ・鶏の料理と独自の食材文化、日本人向けレストランの選び方と食費の現実。
この記事の日本円換算は、1EUR≒160円で計算しています(2026年4月時点)。為替は変動するので、現地通貨(EUR)の金額を基準にしてください。
ポルトガルで「塩タラ(バカリャウ)のレシピは365種類ある」と言われている。1年365日、毎日違う料理として食べられるという誇りを表した言葉で、実際には1000種類以上あるという説もある。
ポルトガル料理の底流には「海と保存食と植民地の歴史」がある。これを知ると、食卓が少し違って見える。
バカリャウという中心
バカリャウ(Bacalhau)は塩漬け・乾燥させたタラで、ポルトガル料理の絶対的な柱だ。見た目は硬く干からびた板のようだが、水で戻すと柔らかくなり、グリル・オーブン焼き・コロッケ(Bolinhos de Bacalhau)・鍋などに変化する。
大航海時代に船旅の保存食として普及し、カトリックの断食日(金曜日に肉を食べない慣習)にも使われた。今もスーパーの陳列棚の一角に、大量のバカリャウが積み上がっている。
在住日本人の感想は真っ二つだ。「塩気と旨みが強くて好き」という人と「独特の匂いが苦手」という人がいる。現地に慣れると後者から前者に転じる人も多い。
日常の食とコスト感
リスボンの地元民向け食堂(Tasca / Restaurante Económico)では、Prato do Dia(日替わりランチ)がEUR 8〜12(約1,280〜1,920円)程度で食べられる。スープ・メイン・デザートまたはコーヒー付きが多い。
ワインはボトルでEUR 3〜7(約480〜1,120円)のものが普通にあり、飲食込みのコストは北欧・英国と比べると格段に安い。
観光エリア(アルファマ・バイシャ・テレイロ・ド・パソ周辺)では同じ料理がEUR 15〜25になる。地元の人が行く食堂は観光地から一本外れた路地にある。この落差をどう使うかが、リスボン生活のコスパを決める。
日本人在住者の食生活
リスボンには複数のアジア系スーパーがあり(Arroios地区・Martim Moniz周辺)、日本の調味料・乾物・インスタント食品が手に入る。価格は日本の1.5〜2倍程度が目安だ。
日本食レストランは増えており、質の高い寿司店もいくつかある。ランチで EUR 15〜25(約2,400〜4,000円)程度が相場。値段を考えると週に1〜2回が現実的な頻度だ。
市場(メルカード)という選択
食材の新鮮さと価格のバランスが最高なのは市場だ。
Mercado da Ribeira(リベイラ市場): リスボン最大の市場。野菜・魚・肉が並ぶが、観光地化されており価格も高め
Mercado de Campo de Ourique: 地元民が使う市場。価格が安く、品質が安定している
週に一度、市場で食材を買いまとめる生活スタイルは、ポルトガル在住者の定番だ。市場に行くだけで「ここで暮らしている」という感覚が体に入ってくる。