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リスボンとポルトの家賃格差——同じ国なのに住居費が倍違う理由

リスボンの家賃は1平方メートルあたりEUR 20.5、ポルトはEUR 15.8。同じポルトガルで家賃に大きな差がつく構造的な理由と、住む街の選び方。

2026-05-01
家賃リスボンポルト不動産生活費

この記事の日本円換算は、1EUR≒160円で計算しています(2026年4月時点)。為替は変動するので、現地通貨(EUR)の金額を基準にしてください。

リスボンでワンルームを借りると月EUR 900(約14万4,000円)。ポルトなら同じ条件で月EUR 700(約11万2,000円)。年間で計算するとEUR 2,400(約38万4,000円)の差だ。同じ国の二大都市で、なぜこれほどの価格差が生まれるのか。

数字で見る家賃格差

2025年11月時点のデータを並べてみる。

指標リスボンポルト
1㎡あたり家賃(中央値)EUR 20.5EUR 15.8
ワンルーム平均家賃EUR 750〜1,200/月EUR 600〜850/月
2ベッドルーム平均家賃EUR 1,600〜2,200/月EUR 1,000〜1,500/月

リスボンの1㎡あたり家賃はポルトより約30%高い。2ベッドルーム以上の物件では差がさらに広がり、ファミリー向けの住居でリスボンとポルトの差はほぼ倍になるケースもある。

価格差の構造的な理由

首都集中: ポルトガルの行政・経済・文化の中心はリスボンに集中している。人口約50万人のリスボン市(都市圏では約280万人)に対し、ポルト市は約23万人(都市圏約170万人)。企業の本社、大使館、国際機関がリスボンに集中しているため、住宅需要の母数が違う。

外国人投資家の流入先: ゴールデンビザ(2023年に不動産投資経路は終了したが、既存投資の影響は残る)、観光業、短期賃貸(Airbnb等)の恩恵がリスボンに集中してきた。外国人バイヤーがリスボンの不動産取引の約40%を占めるのに対し、ポルトではその比率がかなり低い。

観光圧力: リスボンはポルトガル最大の観光都市で、Airbnbを含む短期賃貸が住宅ストックを吸い上げている。観光客向けに物件を回した方が利回りが高いため、長期賃貸に出される物件が減り、家賃が上がる——という循環が続いている。

供給制約: リスボンの中心部は丘陵地形で開発余地が限られている。新規の大規模住宅開発は郊外に限定され、中心部の物件は「古い建物のリノベーション」が主流。リノベーション費用が家賃に上乗せされる。

ポルトの「ちょうどいい」ポジション

ポルトが安いのは、リスボンほどの投機的な需要がないからだ。しかし「安い=劣っている」わけではない。

ポルトにはリスボンにない強みがある。ドウロ川沿いのリベイラ地区はUNESCO世界遺産で、街の美しさではリスボンに引けを取らない。食文化はポルトの方が評価が高いという声もある。フランセジーニャ(ポルト名物のサンドイッチ)の店で€10払えば、腹がはち切れるほどの量が出てくる。

スタートアップやテック企業もポルトに進出を始めている。リスボンのオフィス賃料が高騰する中、ポルトのコスト優位性に注目する企業が増えている。

大学も複数あり(ポルト大学はポルトガル最大の大学の一つ)、若い世代の活気がある。リスボンのように「観光に侵食された街」という感覚はまだ薄い。

家賃以外のコスト差

家賃以外の生活費でも、ポルトの方がリスボンより10〜20%程度安い傾向がある。

項目リスボンポルト
カフェのエスプレッソEUR 0.80〜1.20EUR 0.70〜1.00
ランチ(定食)EUR 8〜12EUR 7〜10
月間交通パスEUR 40EUR 40
ジム月会費EUR 30〜50EUR 25〜40

交通パスはどちらも月EUR 40で統一されている(全国共通の定額パス制度)。食費やサービス業の価格差は、家賃ほどは大きくない。

どちらを選ぶか

「どちらに住むべきか」は、優先順位によって変わる。

リスボンが向いている人: 国際的なネットワークが必要、大使館・行政機関へのアクセスが多い、空港のフライト選択肢を重視する、スタートアップエコシステムに参加したい。

ポルトが向いている人: 住居費を抑えたい、落ち着いた街が好み、食文化を楽しみたい、北部スペイン(サンティアゴ・デ・コンポステーラ等)へのアクセスが欲しい。

「リスボンかポルトか」は、ポルトガル移住で最初に直面する選択だ。どちらも正解で、どちらにもトレードオフがある。ただ、家賃差だけで見ると年間EUR 2,400〜4,800(約38万〜77万円)——この金額は、ポルトガルでの生活を数年単位で考えるなら、無視できない差になる。

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