リスボンの家賃がパリを超えた理由——Airbnbと観光が引き起こした住宅喪失
リスボンの平均家賃は2015年からの10年間で3倍に高騰。Airbnb・ゴールデンビザ・デジタルノマドの流入が現地住民を郊外に押し出した構造を分析。2024年のAirbnb規制、在住日本人の物件探し戦略まで。
この記事の日本円換算は、1EUR≒160円で計算しています(2026年4月時点)。為替は変動するので、現地通貨(EUR)の金額を基準にしてください。
2015年、リスボン中心部のT1(1LDK)の平均家賃は月EUR 500程度だった。2025年、同じ物件がEUR 1,200〜1,500で出ている。ポルトガルの最低賃金が月EUR 870(2025年時点)であることを考えると、リスボンの中心部は「地元の人が住めない街」に変貌しつつある。
3つの圧力
家賃高騰の原因は、ほぼ同時期に到来した3つの外部圧力だ。
1. Airbnbの爆発的増加 — リスボンのAirbnb登録件数は2015年の約5,000件から2023年には約25,000件に急増した。旧市街のアルファマ地区やバイロ・アルトでは、マンションの半数以上がAirbnbに転用されたブロックもある。
2. ゴールデンビザ(2012〜2023年) — 不動産投資EUR 500,000以上で居住権が得られた制度。フランス・中国・ブラジルの投資家がリスボンの物件を買い漁り、価格を押し上げた。2023年に不動産投資によるゴールデンビザは廃止された。
3. デジタルノマド・リモートワーカー — 北欧やアメリカの給与水準でポルトガルの物件を借りる外国人が増え、地元住民との「賃料支払い能力」の格差が拡大した。
政府の対応
2024年以降、ポルトガル政府は以下の規制を導入・強化した。
- 新規のAlojamento Local(短期賃貸)ライセンスの発行停止(リスボン・ポルト中心部)
- 既存ライセンスの更新時に自治体の承認が必要に
- 長期賃貸への転用を促す税制優遇
ただし、既存のAirbnb物件がすぐに長期賃貸市場に戻るかは不透明だ。短期賃貸の方が収益性が高い構造は変わっていない。
在住日本人の物件探し戦略
| 戦略 | エリア例 | 家賃目安(T1) |
|---|---|---|
| 中心部を避ける | Benfica, Lumiar, Odivelas | EUR 700〜1,000 |
| ポルト(第2の都市) | Campanhã, Paranhos | EUR 600〜900 |
| テージョ川南岸 | Almada, Seixal | EUR 500〜800 |
Idealista(不動産ポータル)で物件を探す際、「リスボン市内」にこだわらなければ選択肢は広がる。メトロやフェリーの沿線で中心部まで30分圏内の郊外は、家賃が30〜50%安い。
「ヨーロッパの物価が安い国」というイメージでポルトガルに来ると、リスボンの家賃に驚くことになる。安かったのは過去の話だ。