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大西洋に浮かぶもう一つのポルトガル|マデイラ島の自治と独自経済

リスボンから飛行機で1時間半。マデイラ島はポルトガルの自治地域でありながら、本土とは異なる税制・経済・文化を持つ。クリスティアーノ・ロナウドの故郷の実像を探る。

2026-05-27
ポルトガルマデイラ島自治離島経済

この記事の日本円換算は、1EUR≒160円で計算しています(2026年4月時点)。為替は変動するので、現地通貨(EUR)の金額を基準にしてください。

クリスティアーノ・ロナウドの出身地として名前は知られているが、マデイラ島がどんな場所かを具体的に知っている人は少ない。アフリカ大陸の西、モロッコの沖合約600kmに浮かぶこの島は、ポルトガル本土から約1,000km離れている。リスボンよりカサブランカの方が近い。

人口約25万人。東京の中野区とほぼ同じだ。

自治地域としての権限

マデイラはポルトガルの「自治地域(Região Autónoma)」で、独自の議会と政府を持つ。アソーレス諸島と並ぶ2つの自治地域の一つだ。

外交・防衛・通貨はポルトガル本土と共通だが、税制・教育・医療・交通の一部は自治政府が独自に決定できる。特に税制面での優遇が大きく、法人税率は本土の21%に対してマデイラの国際ビジネスセンター(MIBC)では5%まで下がる。

この低税率を利用して、金融・IT企業のヨーロッパ拠点をマデイラに置くケースがある。EUの制度内で合法的に低税率を享受できる数少ない地域だ。

バナナとワイン

マデイラの農業はバナナとワインが2本柱だ。マデイラ・バナナは本土のスーパーでよく見かける小ぶりで甘い品種。EU域内では「地理的表示保護」を受けている。

マデイラ・ワインは酒精強化ワインの一種で、17世紀から生産されている。船に積まれて赤道を越える間に熱で変質したことが、独特の製法の起源だとされる。甘口から辛口まで種類が多く、料理にも使われる。ティラミスにマルサラの代わりにマデイラを使うシェフもいる。

観光一本足のリスク

島の経済はGDPの約20%を観光業が占める。年間約200万人の観光客が訪れ、大半がイギリス、ドイツ、フランスからだ。温暖な気候(冬でも15〜20℃)と自然景観、特にレバダ(灌漑水路沿いのハイキングコース)が人気だ。

COVID-19のパンデミック時には観光収入が激減し、島の経済は大きな打撃を受けた。観光依存の脆弱性を露呈した経験から、デジタルノマドの誘致やIT企業の招致に力を入れている。

在住する場合

マデイラに住む外国人は増加傾向にある。特にリモートワーカーの間で人気が高い。理由は明確で、本土より生活費が安い、気候が温暖、自然が豊か、治安が良い。

フンシャル(島の首都)のワンベッドルームの家賃はEUR600〜900(約9万6,000〜14万4,000円)。リスボンの6〜7割程度だ。ただし、車がないと移動が不便。バスはあるが本数が限られ、急峻な地形のため自転車は実用的ではない。

日本食材はほぼ手に入らない。アジア系の食材店もない。リスボンから取り寄せるか、本土への出張時にまとめ買いするしかない。

マデイラは「もう一つのポルトガル」だ。本土と同じ言語、同じ通貨、同じパスポート。しかし島の空気は明らかに違う。大西洋の真ん中で、ゆっくりとした時間が流れている。

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