ポルトガルNHR税制の廃止と後継制度——2024年以降の移住戦略はどう変わったか
ポルトガルのNHR(非定住者税制)が2024年に廃止され、後継のIFICT制度(特定職種向け優遇税制)に変わった経緯を解説。移住を検討している日本人への影響と現実的な税務対策。
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「ポルトガルに移住すれば10年間、外国所得に課税されない」——この話を聞いてポルトガル移住を検討した人は多い。NHR(Non-Habitual Resident)制度は、外国人の移住を促進するために設けられた税制優遇で、2009年に導入され、多くのデジタルノマド・早期退職者・投資家を引き寄せた。
しかし2024年、その制度が廃止された。
NHRとは何だったか
NHRは、ポルトガルの税務上の新規居住者に対して10年間の税制優遇を与える制度だ。
- 外国源泉所得(特定カテゴリー)はポルトガルで免税または軽減税率
- 国内の特定高付加価値職業(医師・弁護士・ITエンジニア等)の所得は一律20%の固定税率
これは「外国でフリーランス収入がある」「配当・利息収入がある」「早期退職で年金・投資収益で生活している」という人にとって非常に有利な制度だった。
廃止の背景
住宅価格の高騰・地元住民の生活コスト上昇が社会問題になる中、外国人移住者への優遇税制に対する批判が強まった。2023年の左翼政権下で廃止が決定され、2024年から新規申請が締め切られた。
既存のNHR受給者は期間が切れるまで継続される。
後継制度:IFICI(特定職種優遇税制)
NHRの後継として「IFICI(Incentivo Fiscal à Investigação Científica e Inovação)」が導入された。
対象は限定的で、研究者・テクノロジー職・スタートアップ関連・特定のクリエイティブ職が主な対象だ。適用される固定税率は20%(国内所得)で、外国所得への免税はNHRより縮小されている。
「デジタルノマド全般が使える」という制度ではなくなり、職種・雇用形態の条件が厳しくなった。
移住戦略への影響
NHRがなくなったことで、「税制メリット狙い」のポルトガル移住の魅力は下がった。ただし生活全体の魅力(気候・文化・EU域内移動の自由・比較的安い生活コスト)は変わっていない。
D7ビザ(受動収入ビザ)やデジタルノマドビザは残っており、在留資格の取得ルートは引き続き存在する。ただし税務面は事前に税理士(ポルトガルの認定税理士Contabilista Certificado)に相談することが実質的に必須になった。
「制度が変わった」という事実を知らずに古い情報で移住計画を立てることが最大のリスクだ。