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ポルトガルにペットを連れて行く方法——検疫・書類・現地の動物病院事情

ポルトガルへの犬猫の輸出手続き、マイクロチップ・狂犬病抗体検査・EU健康証明書の取得方法、現地の動物病院と費用を解説。

2026-05-14
ペット動物病院移住手続き検疫犬猫

この記事の日本円換算は、1EUR≒160円で計算しています(2026年4月時点)。為替は変動するので、現地通貨(EUR)の金額を基準にしてください。

ポルトガルはEU加盟国の中でもペットに寛容な国だ。カフェのテラス席に犬がいるのは普通の光景で、リスボンの路面電車にも小型犬なら乗れる。ただし、日本からペットを連れて行くまでの手続きは「寛容」とは程遠い。最低でも7ヶ月前から準備が必要になる。

出発前に必要な手続き(時系列)

7ヶ月前:マイクロチップ装着

ISO規格(11784/11785)のマイクロチップを動物病院で装着する。日本の一般的な動物病院で対応可能。費用はJPY 3,000〜5,000程度。すでに装着済みの場合でもISO規格であることを確認しておく。

6ヶ月前:狂犬病ワクチン接種

マイクロチップ装着後に狂犬病ワクチンを接種する。順番が逆だとEU側で認められない。これが意外な落とし穴で、マイクロチップ→ワクチンの順序を間違えると最初からやり直しになる。

5ヶ月前:狂犬病抗体検査

ワクチン接種から30日以上経過した後、採血して抗体価検査を行う。検査は農林水産省が指定する検査機関(一般財団法人 生物科学安全研究所など)に送る。結果が出るまで2〜3週間。抗体価が0.5 IU/ml以上あればクリア。

検査後180日の待機

日本はEUが定める「リスト国」に入っていないため、抗体検査の採血日から180日間の待機期間が必要。この待機期間を知らずに航空券を先に取ってしまう人が多い。

出発10日前:輸出前検査・健康証明書

農林水産省の動物検疫所で輸出前検査を受ける。ここでEU様式の健康証明書(EU Health Certificate)を発行してもらう。事前予約が必須。

出発当日:空港の動物検疫所で最終確認

成田・羽田・関空の動物検疫カウンターで書類の最終チェックを受け、輸出検疫証明書を取得する。

ポルトガル到着後

リスボン空港の場合、到着ロビーのDGAV(食品獣医総局)のカウンターで書類確認を受ける。EU健康証明書とマイクロチップの照合が行われる。通常は書類に問題がなければ30分程度で通過できる。

到着後30日以内にポルトガルの自治体(Junta de Freguesia)にペットの登録を行い、SIAC(動物識別・登録システム)にデータを入れてもらう必要がある。登録は現地の動物病院でも代行してくれることが多い。

現地の動物病院(Clínica Veterinária)

ポルトガルの動物病院は日本と同等かそれ以上の設備を持つところが多い。特にリスボンとポルトにはCTやMRIを備えた動物専門病院がある。

診察料の目安:

項目費用
初診料EUR 30〜50(約4,800〜8,000円)
ワクチン接種EUR 30〜60(約4,800〜9,600円)
避妊・去勢手術EUR 150〜350(約24,000〜56,000円)
血液検査EUR 50〜100(約8,000〜16,000円)
緊急診察(夜間)EUR 80〜150(約12,800〜24,000円)

日本と比べると診察料はやや安い。ただし、ペット保険は日本ほど普及していない。民間のペット保険(Fidelidade、Ageas等)はあるが、月EUR 15〜40(約2,400〜6,400円)で補償範囲は限定的。

ポルトガルの「ペット先進国」な一面

2014年、ポルトガルは動物の法的地位を「物」から「感覚を持つ存在」(seres sensíveis)に変更した。EU加盟国の中でも早い段階での法改正で、動物虐待に対する罰則も強化された。

自治体が運営する動物保護施設(canil municipal)では、野良犬・野良猫の不妊手術と里親探しを無料で行っている。リスボンでは「Adopt, don't shop」の精神が根付いていて、ブリーダーからの購入よりシェルターからの引き取りが一般的になりつつある。

レストランのテラス席、ショッピングモールの一部店舗、公共交通機関(リスボンのMetroは小型犬・猫ならキャリーに入れれば乗車可)——日本で「ペット可」が特別扱いされるのとは、前提が異なる。

帰国時の注意

ポルトガルから日本に帰国する場合も、狂犬病の抗体検査と180日の待機が必要。つまり「急に帰国が決まった」場合、ペットだけ先に帰国させることができない。短期駐在(1〜2年)の場合は、出発前に帰国時の検査スケジュールまで逆算しておく必要がある。

ペットとの海外移住は「連れて行く覚悟」だけでは足りない。7ヶ月前からのタイムラインを組んで、書類を一つずつ潰していく作業。面倒だが、ポルトガルの街を一緒に散歩できる日を想像すれば、そのための手間は惜しくない。

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