ポルトガルの薬局システム——処方箋なしで買える薬と日本との違い
ポルトガルの薬局(farmácia)で処方箋なしで買える薬、薬剤師の役割、日本の市販薬との違いを解説。在住者が知っておくべき薬の買い方。
この記事の日本円換算は、1EUR≒160円で計算しています(2026年4月時点)。為替は変動するので、現地通貨(EUR)の金額を基準にしてください。
日本のドラッグストアに慣れている人がポルトガルの薬局に行くと、棚がほとんど見えないことに驚く。薬はカウンターの奥にあり、薬剤師に症状を伝えて初めて出してもらえる。セルフサービスで風邪薬をカゴに入れる文化は、ここにはない。
ポルトガルの薬局(Farmácia)の特徴
ポルトガルの薬局は、緑色の十字マークが目印だ。街を歩けばすぐに見つかる。リスボンやポルトなら数百メートルおきにある。
日本のドラッグストアとの最大の違いは、「薬は薬剤師を通さないと買えない」という原則だ。処方箋薬(medicamentos sujeitos a receita médica)はもちろん、処方箋不要の薬(medicamentos não sujeitos a receita médica、いわゆるOTC)であっても、薬剤師が症状を聞いたうえで渡す形式が基本になる。
スーパーマーケットやパラファーマシア(Parafarmácia)でもビタミン剤や化粧品、日焼け止めなどは買える。ただし「薬」と名のつくものは、軽い頭痛薬であっても基本的にはFarmáciaの領域だ。
処方箋なしで買える薬の例
以下の薬は処方箋なしでFarmáciaで購入できる。薬剤師に症状を伝えれば、適切なものを選んでくれる。
| 症状 | 一般的な薬 | 参考価格 |
|---|---|---|
| 頭痛・発熱 | パラセタモール(Ben-u-ron等) | EUR 2〜4(約320〜640円) |
| 風邪・鼻づまり | Griponal、Cêgripe | EUR 4〜8(約640〜1,280円) |
| 胃痛・胸やけ | ラニチジン、オメプラゾール | EUR 3〜6(約480〜960円) |
| 下痢 | ロペラミド(Imodium等) | EUR 4〜7(約640〜1,120円) |
| アレルギー | セチリジン、ロラタジン | EUR 3〜5(約480〜800円) |
| 筋肉痛・打撲 | イブプロフェンジェル(Voltaren等) | EUR 5〜10(約800〜1,600円) |
処方箋が必要な薬
抗生物質、強い鎮痛剤(トラマドールなど)、抗不安薬(ベンゾジアゼピン系)、睡眠薬は処方箋がないと買えない。日本で処方箋なしで買えるものの一部が、ポルトガルでは処方箋必須になるケースもある。逆もある。
日本から持ち込んだ薬の継続処方が必要な場合は、ポルトガルの医師に改めて処方してもらう必要がある。日本の処方箋はそのまま使えない。
薬剤師の役割——医師の代わりに
ポルトガルでは薬剤師の社会的な地位が高い。軽い体調不良——風邪、胃腸の不調、筋肉痛、軽いアレルギー——であれば、医師にかかる前にまず薬局で相談するのが一般的だ。
薬剤師は症状を聞き、適切なOTC薬を選び、服用方法を説明する。必要と判断すれば「医者に行った方がいい」とアドバイスもする。公立病院の待ち時間が長いポルトガルでは、薬局が事実上の「第一次医療」の窓口として機能している。
英語が通じる薬剤師も多い。特にリスボンやポルトの都市部では、症状を英語で伝えても問題なく対応してもらえることがほとんどだ。
日本の市販薬は持っていくべきか
結論から言えば、常備薬は持っていった方がいい。特に以下のような薬は、ポルトガルでは同等品を見つけにくい。
- 総合感冒薬(パブロン、ルル等の「複数症状に効く」系): ポルトガルでは症状ごとに個別の薬を出す傾向がある
- 胃腸薬(正露丸、ビオフェルミン等): 乳酸菌製剤はあるが、日本製のものとは異なる
- 目薬: 種類が少ない。ドライアイ用ならあるが、日本の「さすとスッキリ」系は存在しない
- 湿布(サロンパス等): ジェルやクリームはあるが、日本式の貼る湿布はほぼ見かけない
夜間・休日の薬局
ポルトガルでは「farmácia de serviço」(当番薬局)制度があり、夜間や休日でも交代制で開いている薬局がある。近くの当番薬局を調べるには、各薬局のドアに掲示されている一覧を見るか、ANF(Associação Nacional das Farmácias)のウェブサイト・アプリで検索する。
急な体調不良で夜中に薬が必要になっても、薬が手に入る仕組みは整っている。薬の入手経路を把握しておくだけで、海外生活の安心感はだいぶ変わるものだ。