ポルトガルの山火事はなぜ起きるか:ユーカリ林の拡大と農村の空洞化の連鎖
ポルトガルは欧州で最も山火事が多い国のひとつ。原因は気候変動だけでなく、農村放棄とユーカリの単一植林が複合している。2017年の悲劇から学ぶべき構造を読む。
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2017年6月17日、ポルトガルのペドロゴン・グランデで大規模な山火事が発生し、64人が死亡した(2017年のポルトガル政府公式発表)。同年10月にも別の大火があり、計100人以上の死者が出た。この出来事はポルトガルの山火事問題を世界に知らしめた。
気候変動だけが原因ではない。ユーカリと農村の空洞化が重なっている。
ユーカリ林の拡大
ポルトガルにはオーストラリア原産のユーカリ(Eucalyptus globulus)が大面積を占める。ユーカリはパルプ産業の原料として植林されており、成長が速く経済的だ。
問題は可燃性が非常に高いことだ。ユーカリは葉に油分を多く含み、乾燥した夏に高温の火災を引き起こしやすい。さらに根が深く張り水を大量に消費するため、周辺の土地が乾燥化する。
ポルトガルの森林面積に占めるユーカリの割合は増加しており(推定・国立農業・森林機関のデータより)、これが火災リスクを高めているという批判がある。
農村の空洞化と放棄地
農村から都市への人口移動で、かつて農家が維持していた畑・農地・道が管理されなくなっている。草木が生い茂り、乾燥した夏に火が付くと広がりやすい環境が生まれている。
かつては「村の人々が低木を刈り、農地を維持すること」が自然な防火帯として機能していた。その人手がなくなったことが、火災の広がりやすさに直結している。
2017年以降の政策変化
2017年の悲劇後、ポルトガル政府はユーカリの新規植林規制を強化し、「混交林への転換」「農地管理の義務化」等の政策を打ち出した。
一方でユーカリ産業(パルプ・製紙)は経済的な重要性を持っており、一気に制限することへの産業界からの反発もある。政策と産業の綱引きは続いている。
在住者への実際的な影響
夏のポルトガルでは山火事の煙がリスボンやポルトに届くことがある。空気の質が下がる日は屋外運動を控えるのが推奨される。
内陸部に旅行・移住する場合は、山火事シーズン(7〜9月)の火災リスクエリアの確認が実際的な安全上の考慮事項になる。
ポルトガルの美しい緑の丘は夏に脆弱になる。この構造を知った上で、秋〜春に内陸部の旅を計画するのが賢明だ。