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ポルトガルの水道光熱費——南欧なのに冬が寒い家の断熱問題

ポルトガルの住宅は断熱性能が低く、冬は室内が外より寒く感じることも。光熱費の目安、暖房手段、断熱リノベの現状を在住者視点で解説。

2026-05-01
光熱費断熱暖房生活費

この記事の日本円換算は、1EUR≒160円で計算しています(2026年4月時点)。為替は変動するので、現地通貨(EUR)の金額を基準にしてください。

ポルトガルに「南欧だから冬は暖かい」と思って移住すると、12月の室内で震えることになる。住民の74%が「冬の自宅は寒い」と回答し、「熱的に快適だ」と答えたのはわずか1%——これがポルトガルの住宅の現実だ。

なぜ南欧の家が寒いのか

理由は単純で、断熱材が入っていない。ポルトガルの住宅ストック、特に1990年以前に建てられた物件は、壁・屋根・床に断熱処理がほとんど施されていない。セントラルヒーティングもない。

歴史的な背景がある。ポルトガルの伝統建築は「夏の暑さをしのぐ」ことを第一に設計されてきた。厚い石壁、タイル床、高い天井——夏は涼しいが、冬はその涼しさがそのまま「寒さ」に変わる。壁が冷気を蓄積し、室内が外気温より低くなるという逆転現象すら起きる。

住宅の断熱に関する建築基準が初めて法制化されたのは1990年代。それ以前の建物は基準の適用外で、ポルトガルの住宅の大半がこのカテゴリに入る。

光熱費の実態

ポルトガルの電気料金はEU内でも高い部類に入る。2025年前半時点で約EUR 0.25/kWh。日本の家庭用電力(約30円/kWh前後)と比べても高い水準だ。

暖房器具をフル稼働させると、冬場の電気代は月EUR 100以上(約16,000円以上)の上乗せになる。リスボンの1ベッドルームの場合、冬の光熱費(電気+ガス+水道)は月EUR 80〜150(約12,800〜24,000円)が目安。暖房を控えれば安く抑えられるが、その場合は室内で厚着をすることになる。

在住者がとる暖房手段

セントラルヒーティングがない住宅では、以下の方法で冬を乗り切るのが一般的だ。

オイルヒーター(radiador a óleo): 最も普及している方法。部屋ごとに置くため、リビングと寝室に1台ずつ必要。電気代がかさむが、火災リスクは低い。

エアコンの暖房モード: 新しい物件にはエアコンが付いていることがある。冷暖房兼用で効率が良い。ただし古い建物では設置されていないことが多い。

電気毛布・ホットカーペット: 局所的に温めるなら最もコスパが良い。ポルトガルの家電量販店(Worten、FNAC等)で冬前に購入できる。

薪ストーブ(lareira): 郊外の一軒家では暖炉や薪ストーブが現役。雰囲気は良いが、薪の調達と煙突のメンテナンスが必要。

断熱リノベーションの動き

ポルトガル政府は「PAE+S(Programa de Apoio a Edifícios Mais Sustentáveis)」という補助金プログラムを設けている。断熱工事、二重窓への交換、ソーラーパネル設置、ヒートポンプ導入などの費用を一部補助する制度だ。

ただし、賃貸物件の場合は大家の判断次第で、入居者が断熱改修を主導するのは難しい。物件探しの段階で「二重窓か」「エアコンがあるか」「築年数はいつか」を確認するのが、冬を快適に過ごすための最も確実な方法になる。

物件選びの視点

ポルトガルで物件を探すとき、多くの人は立地・家賃・広さを重視する。でも冬の快適さを左右するのは「建物の断熱性能」で、これは内見だけではわからない。

築年数が一つの目安になる。2000年以降の物件なら断熱基準を満たしている可能性が高い。逆に、アズレージョ(装飾タイル)が美しい築100年の物件は、冬の寒さとセットだと思っておいたほうがいい。

南欧の陽光と、石壁に閉じ込められた冬の冷気。この矛盾がポルトガルの住宅事情で、住んでみないと実感できない部分でもある。

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