帰国時の海外銀行口座をどうするか——残高送金・口座維持・解約の選択肢
本帰国するときに海外の銀行口座をどう処理するか。残高のWise送金・口座維持のメリットデメリット・解約手順・日本の銀行への資金移動で気をつける税務リスクを解説。
帰国が決まった段階で「海外の銀行口座、どうしよう」と思った人は多いはずだ。残高をどう日本に持ってくるか、口座はそのまま持ち続けられるか、解約したらどうなるか。選択肢は3つあり、状況によって正解が変わる。
3つの選択肢と判断基準
| 選択肢 | 向いているケース |
|---|---|
| ① 解約して残高を全額送金 | 今後その国に戻る予定がない・口座維持手数料が負担 |
| ② 口座を維持して少額を残す | 将来また海外に行く可能性がある・投資口座として使う |
| ③ メイン口座は解約、投資口座だけ維持 | 株式・ETF・定期預金等が残っている |
「とりあえず解約しなくていい」と思って放置するのが一番よくないパターン。非居住者口座の扱いが変わって強制解約になったり、連絡が取れなくなって手続きが面倒になることがある。
残高を日本に送る方法
Wiseを使う
最もコストが低く、手続きが簡単なのがWiseでの送金。
手順の流れ:
- Wiseのアカウントを作成(現地のスマートフォンで可)
- 海外銀行口座からWise口座に入金
- 日本の銀行口座宛てに送金(JPY受け取り)
手数料の目安(2025年時点の実績ベース、Wiseの公式サイトで最新を確認):
- SGDからJPYへの送金: 送金額の0.4〜0.6%程度
- THBからJPYへの送金: 送金額の0.6〜0.8%程度
- AUDからJPYへの送金: 送金額の0.5%程度
銀行の電信送金(TT)に比べると手数料が大幅に安い。銀行によっては送金1件あたり3,000〜5,000円の手数料が取られることもある。
現地ATMで引き出して現金を持ち込む
少額であればこの方法が手っ取り早い。ただし100万円相当を超える現金や小切手等を日本に持ち込む場合は、税関での申告が必要(外国為替及び外国貿易法)。申告自体は義務であり、申告すれば問題なく持ち込める。
申告書の書式は税関で入手できる。申告せずに持ち込んだ場合は罰則の対象になる。
海外銀行口座を維持するメリット・デメリット
維持するメリット
将来の選択肢を残せる。また同じ国や別の国に赴任・移住する可能性があるなら、口座を持ち続けていると再開設の手間が省ける。とくにシンガポールのような金融口座の審査が厳しい国では、既存口座の価値は高い。
投資口座として機能させられる。現地の証券口座(Interactive Brokers、TD等)や外貨定期預金を維持するために紐付けの銀行口座が必要な場合がある。
維持するデメリット
非居住者口座の手数料。多くの銀行は非居住者口座に月額手数料や最低残高要件を設けている。シンガポールのDBS、OCBCは非居住者でも口座維持できるが、条件次第で手数料が発生する。
税務申告の義務が生じる。口座を維持する限り、発生する利子・運用益は日本の所得として申告が必要になる(後述)。
注意が必要な税務ポイント
帰国後は海外口座の所得も申告対象
日本に帰国して「居住者」に戻った時点から、世界中のすべての所得が日本の所得税の対象になる。海外銀行口座の利子、外国株の配当、外国の投資信託の分配金も含まれる。
確定申告で「雑所得」または「配当所得」として申告する必要がある。申告額が少額でも申告義務は変わらない。
出国税(国外転出時課税)との関係
出国時に有価証券等の含み益に課税される「国外転出時課税」(通称・出国税)を払っていた場合、帰国後に売却額が低下していれば還付申請ができる。帰国後5年以内に帰国して再び居住者になれば、納税猶予・還付の仕組みを使える。詳細は国税庁の公式サイトで確認してほしい。
大口資金移動と税務リスク
数千万円規模の資金を日本に移動させる場合、税務当局から「お金の出どころはどこか」という確認が入る可能性がある。海外での給与・投資で正当に得た資金であれば問題ないが、説明できる資料(給与明細、証券口座のステートメント等)は保管しておくことをすすめる。
解約手順の一般的な流れ
- 残高を別口座(Wise等)に移動
- 銀行のアプリやネットバンキングからクロージング申請(対応している銀行が増えている)
- クロージング書類の提出が必要な場合は、帰国前に現地窓口で手続き
- 残口座の通知先メールアドレスを使えるうちに変更しておく
現地に戻らず日本から解約しようとすると、郵便物のやり取りが生じて数ヶ月かかることがある。できれば帰国前に窓口で完結させる方が楽。
判断のまとめ
海外口座を持ち続けること自体は問題ない。ただし「なんとなく放置」はリスクになる。
- 口座を維持する → 非居住者口座の条件を確認、税務申告ルールを把握
- 解約する → 帰国前に現地で手続き完了が理想
- 残高移動 → Wiseが手数料・使い勝手ともに現実的な選択肢
どの選択をするにしても、帰国後の確定申告で海外口座の所得を申告することは忘れないでほしい。