帰国後の年金——任意加入していた期間・CPF・EPFはどうなるか
海外在住中に国民年金に任意加入していた人の帰国後の手続き、任意加入していなかった場合の空白期間の扱い、シンガポールCPF・マレーシアEPF・オーストラリアSuper等の外国年金の日本帰国時の扱いを解説。
海外にいる間に積み上がっていた外国の年金制度——シンガポールのCPF、マレーシアのEPF、オーストラリアのスーパーアニュエーション。帰国後もそのまま放置してしまう人が多い。国によって引き出しのルールが異なり、手続きを知っているかどうかで受け取れる額が変わる。
日本の国民年金:任意加入の人の帰国後の扱い
海外在住中に任意加入を続けていた場合、帰国して転入届を出した時点で、第1号被保険者(自営業・無職等)または第2号被保険者(会社員)として自動的に強制加入に切り替わる。
任意加入を終了する手続きは不要。転入届の提出と国民年金の被保険者資格の変更は連動して処理される。
就職した場合は厚生年金(第2号被保険者)に自動加入。国民年金(第1号)の脱退手続きは職場が行う。
任意加入していなかった場合:空白期間の扱い
海外在住中に任意加入をしていなかった期間は「未加入」として扱われる。この期間は老齢基礎年金の受給額に反映されない。
ただし「カラ期間」(合算対象期間)として受給資格期間の10年(120ヶ月)には算入される。つまり、受給額には影響しないが「受給できるかどうか」の判定には含まれる。
| 期間の種類 | 受給額への影響 | 受給資格期間への算入 |
|---|---|---|
| 任意加入していた期間 | 加算される | される |
| 未加入期間(海外在住) | されない | される(カラ期間) |
| 未納期間(国内在住) | されない | されない |
帰国後に過去の空白を埋めたい場合、「追納」の制度があるが、対象は国内在住中の未納期間のみ。海外在住中の任意加入の未加入期間は追納できない。
シンガポール CPF(Central Provident Fund)の引き出し
シンガポールで就労していた外国人(Permanent Residentでない)は、帰国時にCPFの全額引き出しができる。
申請方法(Full Withdrawal)
- CPFのオンラインポータル(my.cpf.gov.sg)にログイン
- 「CPF Full Withdrawal」または「Leaving Singapore Permanently」から申請
- シンガポールを離れることが確認できる書類(出国記録等)を提出
- 審査後、指定口座に振り込まれる
引き出し時に源泉徴収(税)はかからない。ただし日本に帰国後、受け取った資金が「一時所得」や「雑所得」として日本の所得税の対象になるかどうかは、国税庁または税理士に確認することをすすめる。
マレーシア EPF(Employees Provident Fund)の引き出し
マレーシアで就労していた外国人は、退職時または本国帰国時にEPFの一括引き出しができる。
申請方法
- EPFオフィス(KWSP)に直接来訪、またはオンライン申請(i-Akaun)
- 「Non-Malaysian Citizen Withdrawal」を選択
- パスポート、就労ビザ、帰国便の証明などを提出
引き出しには審査に数週間かかることがある。帰国前に申請を開始しておき、帰国後に振り込まれる形が多い。残高の確認はi-Akaunアプリから随時できる。
オーストラリア スーパーアニュエーション(Super):DASP申請
オーストラリアで就労していた外国人ビザ保有者は、ビザが失効した後に「DASP(Departing Australia Superannuation Payment)」を申請してSuperを引き出せる。
申請の条件
- 一時ビザ(Working Holiday Visa等)でオーストラリアに滞在していたこと
- ビザが失効していること(または帰国後に失効すること)
- オーストラリアから出国していること
申請方法
オーストラリア税務局(ATO)のDASPオンラインシステムから申請。帰国後、日本からでも申請できる。
注意: DASPには税金が引かれる。2024年時点の税率は65%と高い(一時ビザ保有者の場合)。受け取り額は期待より少なくなることを前提に考える必要がある。
PR(永住権)保有者はDASP対象外。退職年齢(Preservation Age: 60歳等)まで引き出せない。
社会保障協定がある国とない国の違い
日本はいくつかの国と社会保障協定を締結しており、年金の通算制度が使える。
協定のある主な国(2025年時点)
ドイツ、イギリス、アメリカ、カナダ、オーストラリア、フランス、ベルギー、オランダ、チェコ、スペイン、アイルランド、ブラジル、スイス、ハンガリー、インド、韓国等
通算のしくみ
たとえば日本とオーストラリアの両方で一定期間加入していた場合、両国の加入期間を通算して受給資格を満たすことができる。受給額はそれぞれの国が自国の加入期間分を払う。
シンガポール・マレーシア・タイ等との協定はまだない(2025年時点)。これらの国での加入期間は日本の年金には算入されない。
帰国後に確認しておくこと
- 日本年金機構の「ねんきんネット」または「ねんきん定期便」で加入記録を確認する
- 海外在住中の任意加入の記録が正しく反映されているか確認する
- CPF・EPF・Superの申請手続きは「忘れた頃に積み上がったまま」になりやすいため、帰国後6ヶ月以内に動いておく
外国年金は申請しなければ受け取れない。知らなかったでは勿体ない。在住期間が長ければ長いほど、引き出せる金額も大きくなる。