帰国後の確定申告——非居住者から居住者に戻るときの税務手続き
日本に本帰国した年の確定申告の注意点。非居住者期間中の所得、帰国後の居住者判定、海外口座の利子・配当の申告義務、出国税(国外転出時課税)の還付手続きを解説。
帰国した年の確定申告は、通常の年より手続きが複雑になる。「非居住者期間」と「居住者期間」が1年の中に混在するからだ。どのタイミングから日本の税制が適用されるのかを把握しておかないと、申告漏れや二重課税が生じる可能性がある。
帰国した年の所得区分
日本に帰国して住民票を入れた日(転入届の日)から、税法上の「居住者」に戻る。それ以前の期間は「非居住者」として扱われる。
1年の中でこの2つの期間が混在する場合、それぞれの期間の所得を分けて申告する必要がある。
| 期間 | 区分 | 課税対象の所得 |
|---|---|---|
| 海外在住中(転入届前) | 非居住者 | 日本国内源泉所得のみ |
| 帰国後(転入届以降) | 居住者 | 国内外のすべての所得 |
非居住者期間中に得た海外の給与・事業所得・投資所得は、原則として日本で課税されない(国内源泉所得がある場合は別)。
居住者に戻った後の課税対象
帰国して居住者に戻った日以降は、世界中の所得が日本の所得税の対象になる。これを「全世界所得課税」という。
具体的には以下のようなものが申告対象になりうる。
- 帰国後に受け取った海外銀行口座の利子
- 外国株・外国ETFの配当金(帰国後に受け取った分)
- 外国の投資信託の分配金
- 海外不動産の賃料収入(帰国後分)
- 仮想通貨の売却益
「海外の口座だから日本では申告しなくていい」という認識は誤り。帰国後に発生した所得は、口座の所在地に関係なく申告が必要。
出国税(国外転出時課税)の還付手続き
出国時に有価証券等の未実現益に対して課税される「国外転出時課税」(出国税)。これを納付または猶予を受けていた人が、帰国後5年以内に再び居住者になった場合、一定の条件で還付または猶予の取り消しを受けられる。
還付申請の流れ
- 帰国した年の確定申告(または修正申告)で申請する
- 出国時から帰国時までの株価・資産価値の変動で還付額が決まる
- 出国後に資産が値下がりしていれば還付が受けられる
出国税の計算と還付申請は複雑なため、税理士への相談を検討する選択肢がある。国税庁の公式サイト(nta.go.jp)にも解説がある。
住民税の再課税タイミング
日本の住民税は「前年の所得」に基づいて、翌年1月1日の住所地で課税される。
帰国した年の翌年1月1日に日本に住所があれば、その市区町村から住民税が課税される。この住民税の課税対象は「帰国した年(居住者になってから年末まで)の所得」になる。
注意点として、帰国した年に就職していなくても、帰国後に受け取った海外口座の利子や投資所得があれば住民税が課税される可能性がある。
納税管理人の解除
海外赴任中に「納税管理人」を立てていた人(確定申告の代理人として税務署に届け出ていた場合)は、帰国後にその解除手続きが必要になる。
- 管轄の税務署に「納税管理人の解任届出書」を提出
- 本人が日本に戻ったことを証明(パスポートのスタンプ等)
これを解除しないと、確定申告の通知が納税管理人宛てに送られ続けることになる。
外国税額控除の活用
帰国した年に、海外で源泉徴収された税金がある場合、日本の確定申告で「外国税額控除」を使えることがある。
たとえば帰国後に外国株の配当を受け取り、現地で10〜15%の源泉徴収が行われていた場合、日本での申告時に二重課税分を控除できる制度。控除しきれなかった場合は翌年以降に繰り越せる。
帰国年の確定申告の流れ(まとめ)
- 居住者になった日を確認(転入届の日)
- 非居住者期間の国内源泉所得を確認(日本の賃料収入、日本株の配当等)
- 居住者期間の全世界所得を集計
- 出国税の納税猶予を受けていた場合は還付手続き確認
- 外国税額控除の計算(海外で源泉徴収された税金がある場合)
- 翌年2月16日〜3月15日に確定申告書を提出
金額が大きい場合や複数の国にまたがる所得がある場合は、国際税務に詳しい税理士に確認する選択肢がある。費用はかかるが、申告漏れによる追加税・加算税よりは安く済むことが多い。
申告は複雑でも、情報は公開されている。国税庁の「タックスアンサー(No.2875)」には居住者・非居住者の判定と課税範囲がまとまっているので、まずそこから読み進めてほしい。