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シンガポールの電気代の4割はエアコンが作っている——熱帯都市のエネルギー代

年間平均気温27度、湿度80%のシンガポールで、エアコンは生存インフラだ。家庭の電力消費の約40%を空調が占める。エアコンの設定温度が1度変わると電気代はどう動くのか。数字で見る熱帯生活のコスト構造。

2026-05-10
シンガポール電気代エアコン生活費エネルギー

この記事の日本円換算は、1SGD≒115円で計算しています(2026年4月時点)。為替は変動するので、現地通貨(SGD)の金額を基準にしてください。

シンガポールに住み始めて最初の電気料金の請求書を見たとき、数字が間違っていると思った——という話を在住日本人から何度か聞いたことがある。エアコンを24時間稼働させた結果、月の電気代が300〜500SGD(約34,500〜57,500円)に達するのは珍しくない。日本の一般家庭の電気代(月平均約10,000〜15,000円)の3〜5倍だ。

シンガポールの電気料金の仕組み

シンガポールの電力市場は2019年に自由化された。SP Group(旧Singapore Power)が送配電を担い、発電と小売は複数の事業者が競争する構造だ。一般家庭は規制料金(SP Groupの四半期ごとのTariff)か、オープン・エレクトリシティ・マーケット(OEM)で小売事業者と契約するかを選べる。

2024〜2025年の規制料金は1kWhあたり約0.30〜0.33SGD(約34.5〜38円)。日本の家庭用電力料金(1kWhあたり約30〜40円)と大差ないように見える。差を生むのは「使用量」の方だ。

エアコン1台のコスト計算

一般的なスプリット型エアコン(1.5馬力、冷房能力3.5kW、消費電力約1.0kW)を計算してみる。

  • 1時間あたり電力消費: 約1.0kWh
  • 電気料金: 0.32SGD/kWh
  • 1時間のコスト: 0.32SGD(約37円)
  • 1日8時間稼働: 2.56SGD(約295円)
  • 1日16時間稼働: 5.12SGD(約589円)
  • 月額(8時間): 約77SGD(約8,855円)
  • 月額(16時間): 約154SGD(約17,710円)

2ベッドルームのコンドミニアムでリビングと寝室の2台を稼働させると、エアコンだけで月150〜300SGD。ここに照明・冷蔵庫・洗濯機・給湯器を足すと、合計300〜500SGDになる構造がわかる。

25度設定と22度設定の差

エアコンの設定温度を1度下げると、電力消費は約3〜5%増えるとされる。25度設定と22度設定では約10〜15%の差になる。月300SGDの電気代であれば、30〜45SGD(約3,450〜5,175円)の差だ。

シンガポール政府のNEA(National Environment Agency)は25度以上の設定を推奨している。しかし、在住日本人の間では「23度にしないと寝られない」という声も多い。日本の夏とは違い、シンガポールの夜間気温は25〜28度から下がらない。窓を開けても涼しくならない。エアコンなしで眠れる夜は年に数日もない。

扇風機という対抗策

電気代を抑える現実的な方法は、エアコンと天井扇風機(シーリングファン)の併用だ。シンガポールのコンドミニアムやHDBの多くには天井扇風機が標準装備されている。エアコンを26〜27度に設定して天井扇風機を回すと、体感温度は23〜24度まで下がる。

天井扇風機の消費電力はエアコンの20分の1以下(約50W)。月額に換算すると2〜3SGD程度。この併用で月の電気代を50〜100SGD節約できる可能性がある。

HDBとコンドミニアムの電気代格差

HDB(公営住宅)の居住者は平均で月100〜200SGD程度の電気代を支払っている。コンドミニアムの居住者は300〜500SGD。この差は単に面積の違いだけではない。

コンドミニアムは共用施設(プール・ジム・ロビー)の電気代が管理費に含まれている。管理費は月400〜1,000SGD。その一部が共用エリアの空調に使われている。ジムのエアコンが24時間稼働しているコンドミニアムに住んでいる場合、間接的にその電気代を払っていることになる。

電力の供給源

シンガポールの電力の約95%は天然ガス火力発電だ。自国には天然ガスの産出がなく、マレーシアとインドネシアからパイプラインで輸入している。つまり電気料金は国際的なガス価格に連動する。2022年のウクライナ情勢でガス価格が高騰した際、シンガポールの電気料金も急上昇した。

太陽光発電の導入が進んでいるが、国土面積の制約から大規模なソーラーファームは建設できない。HDBの屋上にパネルを設置する「SolarNova」プログラムが進行中だが、全需要に対するカバー率はまだ数%だ。

結局いくらかかるのか

シンガポール在住で、2ベッドルーム・2人暮らしの場合、電気代の目安は月200〜400SGD(約23,000〜46,000円)。日本感覚の倍以上だ。家賃3,500SGDに電気代400SGDを足すと住居関連費だけで月3,900SGD(約44.9万円)。この数字を見ると、シンガポールの「高い生活費」の正体の一部がエアコンだったことに気づく。

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