シンガポールの車——COE制度と世界一高い自動車コスト
シンガポールで車を持つには、COEだけで数百万円かかる。COE入札の仕組み、道路税、保険まで含めた自動車総コストと、在住日本人の賢い移動手段の選択を解説します。
この記事の日本円換算は、1SGD≒115円で計算しています(2026年4月時点)。
シンガポールで「車を買いたい」と思った日本人が、価格を調べて絶句するのはよくある話だ。日本で200万円台で買えるコンパクトカーが、シンガポールでは総費用150,000SGD(約1,725万円)を超えることがある。この価格差の大半を占めるのが、COE(Certificate of Entitlement)という独特の制度だ。
COEとは何か
シンガポール政府は1990年代から、道路混雑を抑制するために自動車の総台数を上限管理している。車を新たに登録するには、まず「走行権利証明書」であるCOEを入札で取得しなければならない。
COEは10年間有効で、カテゴリ別に2週間ごとに競争入札が行われる。主なカテゴリは以下のとおりだ。
- Category A:排気量1,600cc以下または出力130kW以下の乗用車
- Category B:それ以外の乗用車・SUV
- Category E:全車種対応(最も高値がつきやすい)
2025年後半の落札価格はCategory Aで約97,000〜105,000SGD(約1,115万〜1,208万円)、Category Bで約100,000〜110,000SGD(約1,150万〜1,265万円)前後で推移している。需給バランスで毎回変動し、過去には150,000SGDを超えた時期もある。
COEの上に乗る各種費用
COEを取得しても、それだけで車に乗れるわけではない。
ARF(追加登録料):車両のOMV(公開市場価格)に応じた税金。OMVが20,000SGD以下は100%、それ以上は段階的に最大220%まで課税される。
道路税:エンジン排気量に応じた年間税。1,600cc車で年間約700〜1,000SGD程度。
自動車保険:外国人ドライバーは保険料が割高になりやすく、年間2,500〜4,000SGD程度が目安。
ERP(電子道路課金):都心部や主要幹線道路の混雑時間帯に課金される。使用頻度によって月数百SGDになることもある。
10年後のCOE更新
10年でCOEが失効すると、更新か廃車かの選択を迫られる。更新は5年または10年単位で、その時点の最新COE価格を支払う必要がある。高齢になった車に改めて高額のCOEを払うか、新車に買い替えるかの判断が必要になる。
在住日本人の現実的な移動手段
これだけのコストがかかるため、多くの在住外国人は車を持たない選択をしている。
MRTとバスのネットワークはアジア屈指の充実度で、EZLinkカードがあれば市内のほとんどの場所に行ける。GrabやComfortDelGroのタクシーも24時間利用可能だ。週末に郊外へ出かけたい場合は、カーシェアサービス(BlueSG等)や日帰りレンタカーで対応している在住者も多い。
「子どもが複数いてチャイルドシートが必要」「ジョホールに買い物に行く頻度が高い」「仕事の関係で深夜移動が多い」——こうした具体的な理由がない限り、シンガポールでの車保有は費用対効果が低い。車を持たない生活を前提に住居を選ぶのが、シンガポール在住コストを抑えるうえで現実的な選択肢だ。