シンガポールの車の値段——COE制度と庶民が車を持てない構造
シンガポールで車を持つにはCOE(車両割当証明書)が必須。その価格が100万円を超えることも。COE制度の仕組みと車を持つ総コストを解説。
この記事の日本円換算は、1SGD≒115円で計算しています(2026年4月時点)。為替は変動するので、現地通貨(SGD)の金額を基準にしてください。
シンガポールで車を買おうとすると、まず「そもそも車を買う権利を買う」ところから始まる。
COE(Certificate of Entitlement:車両割当証明書)と呼ばれる制度で、車を登録する権利を政府の入札で取得しなければならない。2024年後半の落札価格は1.6L以下の小型車カテゴリでSGD 95,000〜110,000(約1,100万〜1,260万円)台で推移した。車を買う前の「入場料」がこの金額だ。
COE制度とは何か
COEは10年間の有効期間つき。期限が来たら同等の費用でCOEを更新するか、車を廃車にするかの選択になる。これはシンガポールの道路容量を管理するための仕組みで、1990年に導入された。
カテゴリは排気量・用途によっていくつかに分かれており、一般乗用車は主に「Cat A(1.6L以下)」と「Cat B(1.6L超)」に分類される。Cat BのCOEはさらに高く、過去にはSGD 150,000(約1,725万円)を超えたこともある。
COEは需要と供給のオークションで価格が決まる。新車登録台数の上限が政府によって管理されているため、台数が絞られると入札価格が上がる構造になっている。
車1台の総取得コスト
COEを取得した後も、車の本体価格・各種税・ARF(追加登録料)が加算される。
例として、トヨタ カムリ(2.5L)をシンガポールで新車購入するケースを考えると:
- 本体価格(輸入・税込): SGD 120,000前後(約1,380万円)
- COE(Cat B、2024年実績): SGD 100,000〜150,000(約1,150万〜1,725万円)
- ARF等その他費用: SGD 10,000〜20,000(約115万〜230万円)
- 合計: SGD 230,000〜290,000(約2,650万〜3,350万円)前後
日本での同型車の実勢価格が約400万円なので、シンガポールでは6〜8倍の支出になる計算だ。
それでも車を持つ人の論理
「そんなに高いなら誰も持たないのでは」と思うかもしれないが、シンガポールには車を持つ層が一定数いる。理由は主に三つ。
一つ目は「家族の移動効率」。子どもの学校送迎・週末の買い出し・郊外のモール——公共交通でも生活できるが、子持ち家庭にとって車の利便性は大きい。
二つ目は「ステータス」。COEが高いからこそ、車を持つこと自体が経済的な余裕の証明になる。
三つ目は「マレーシア往来」。週末にジョホールバル(JB)へ買い物・食事に行く生活スタイルが定着しており、自家用車での往来が非常に便利だ。
駐在員・在住外国人の現実
多くの日本人駐在員は、会社が車のアロワンスを出す場合を除き、MRT・バス・Grabの組み合わせで生活する。Grabの初乗りがSGD 4〜8(約460〜920円)程度で、タクシーよりも使いやすく、月に50〜100回使っても車を持つより圧倒的に安い。
シンガポール生活で車は「あると便利」だが「ないと困る」場所ではない。MRTのカバー率が高く、徒歩圏内に生活インフラが揃うエリアに住めば、車なしでも生活の質は十分に維持できる。