CPF(中央積立基金)——永住権申請者と外国人が知るべき年金積立の仕組み
シンガポールのCPFは強制積立型の社会保障制度だ。就労ビザ保持者には適用されないが、永住権(PR)取得後は強制加入になる。制度の仕組みと影響を整理する。
この記事の日本円換算は、1SGD≒115円で計算しています(2026年4月時点)。
シンガポールで就労ビザ(EP・S Pass等)で働いている間はCPFの対象外だ。ただしPR(永住権、Permanent Resident)を取得した瞬間から、毎月の給与の一定割合がCPFに強制的に積み立てられるようになる。PR申請を検討するなら、この影響を事前に理解しておきたい。
CPFとは
CPF(Central Provident Fund、中央積立基金)はシンガポールの強制積立型社会保障制度だ。老後資金・医療費・住宅購入の3つの目的のために設計されており、従業員と雇用主の双方が毎月拠出する。
対象者:シンガポール国民(Singapore Citizen)と永住権保持者(PR)のみ。就労ビザ(Employment Pass・S Pass・Work Permit等)保持者は対象外。
拠出率(2024年時点)
拠出率は年齢によって変わる:
| 年齢 | 従業員拠出 | 雇用主拠出 | 合計 |
|---|---|---|---|
| 55歳以下 | 20% | 17% | 37% |
| 55〜60歳 | 15% | 15% | 30% |
| 60〜65歳 | 9.5% | 11.5% | 21% |
| 65歳以上 | 7% | 9% | 16% |
月収5,000SGD(約575,000円)の55歳以下の場合、毎月1,000SGD(約115,000円)が従業員負担として給与から天引きされ、雇用主が850SGD(約97,750円)を追加拠出する。合計1,850SGD(約212,750円)/月がCPFに積み立てられる。
拠出上限(Ordinary Wage Ceiling):月収6,800SGD(2024年時点)が拠出の上限。これを超える収入には拠出率が適用されない。
CPFの3つの口座
積立金は3つの口座に配分される:
Ordinary Account(OA)
住宅購入(HDB・民間)のローン返済・教育費・生命保険に使用可能。利率:年2.5%。残高はHDB住宅の頭金や月次ローン返済に充当できる。
Special Account(SA)
老後資金として原則60歳まで引き出し不可。利率:年4%。
MediSave Account(MA)
医療費(入院・手術・一定の外来診療)専用。利率:年4%。シンガポールの公立病院費用はMediSaveから支払える。
PRになったときの実際の影響
手取りが減る
月収5,000SGDの場合、EPで働いていたときは全額手取りだったが、PRになると手取りが4,000SGD(約460,000円)になる。この差を「積立に回っている」と捉えるか「手取りが減った」と感じるかは人によって異なるが、生活費の計算は変更が必要だ。
住宅購入の選択肢が広がる
PRになると、外国人では買えないHDB(公共住宅)の中古物件を購入できるようになる。OA残高をローン返済に充てられるため、住宅費の実負担感が下がるケースがある。
MediSaveで医療費が払える
高額になりやすい入院費の一部をMediSaveから支払えるようになる。民間医療保険の補完として機能する。
PR申請前に確認すること
PRになることによるCPF拠出の影響は、個人の財務状況・ライフプラン・シンガポールでの長期居住意向によって評価が変わる。
「シンガポールで長期的に資産を積み立て住宅を購入するつもり」なら、CPFは合理的な仕組みだ。一方、「数年後に日本に帰国する可能性が高い」場合、帰国時にCPFの積立金をどう扱うかという問題が残る。
帰国時のCPF引き出し:PR・市民権を放棄してシンガポールから永久離国する場合、CPF残高は申請によって全額引き出しが可能だ(ただし所得税の取り扱い・申請手続きが必要)。
CPFの制度設計は複雑で、細かい変更が毎年行われている。最新の拠出率・上限はCPFボード公式サイト(cpf.gov.sg)で確認することを推奨する。