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シンガポールがWeb3の拠点になった理由——MASのライセンス制度と暗号資産の現実

シンガポールはアジアの暗号資産・Web3産業の拠点として機能している。規制の枠組みを作って事業者を誘致するMAS(金融管理局)のアプローチと、在住者が知っておくべき現実を整理する。

2026-07-24
暗号資産Web3フィンテック規制シンガポール

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2022年のFTX崩壊は世界の暗号資産業界に衝撃を与えたが、その余波はシンガポールにも届いた。FTXの創業者サム・バンクマン=フリードが一時シンガポールを拠点にしていたこと、複数の暗号資産企業がシンガポール法人を持っていたこと——それが報じられた。

それでも、シンガポールはWeb3産業の誘致を諦めなかった。むしろ、その後の規制強化で「信頼できる管轄区域」としての地位を固める方向に動いた。

MASとDPT法制

シンガポール金融管理局(MAS)は、デジタル決済トークン(DPT)サービスを提供する事業者に対し、Payment Services Act(PSA)に基づくライセンス取得を義務付けている。

ライセンス取得には資本要件・AML(マネーロンダリング防止)対応・技術審査が必要で、厳格な審査プロセスを経た事業者のみが合法的に暗号資産サービスを提供できる。これにより、「規制の場所が明確」「違法業者を排除できる」という事業者にとっての安心感を提供している。

なぜ事業者が集まるか

シンガポールに拠点を置くメリットは複数ある。

まず英語でのビジネスが可能な点。東南アジアのどの国よりも法的環境が整備されており、契約・訴訟リスクの予測可能性が高い。

次に人材の集まりやすさ。世界中からエンジニア・ファイナンス人材が集まる環境に加え、大学・研究機関との連携もある。

税制も機能している。法人税率は17%で、適切な設計をすれば低い実効税率を実現できる。キャピタルゲイン課税がない点も、デジタル資産を扱う企業にとって重要な要素だ。

在住者が知っておくこと

個人としてシンガポールに住みながら暗号資産を保有・取引する場合、シンガポールにはキャピタルゲイン税がない。暗号資産の売却益はそれだけでは課税されない(ただし事業として行っている場合は所得課税の対象になる可能性がある)。

一方で、日本との関係で注意が必要なのは、シンガポールに住みながら日本の税務上の居住者と認定される場合、日本の暗号資産課税ルールが適用される可能性があることだ。転出届の提出と税務上の居住者判定を正確に把握しておくことが重要だ。

FTX後のシンガポールの評判

FTX崩壊後、「シンガポールのデューデリが甘かった」という批判もあったが、MASはその後の規制強化を素早く進めた。消費者向けの暗号資産広告規制、レバレッジ取引の個人向け制限など、「成熟した規制」を示すことで信頼を回復する動きを取っている。

Web3産業の「良い部分だけを取り込む」設計を続けているのが、シンガポールの金融政策のスタンスだ。

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