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シンガポールの環境政策——Green Plan 2030と市民の意識

シンガポールは2021年に「Singapore Green Plan 2030」を発表し、2030年までの環境目標を設定した。在住者として感じる環境意識の現実と、日本との比較を整理します。

2026-04-23
環境政策Green Planサステナビリティシンガポール気候変動

この記事の日本円換算は、1SGD≒115円で計算しています(2026年4月時点)。

シンガポールの街を歩いていると、植物に覆われた建物、ソーラーパネルを搭載した組合住宅(HDB)、清潔に管理された公園緑地が目に入る。「Garden City(庭園都市)」という国家コンセプトは1960年代のリー・クアンユー政権期に始まり、現在も継続されている。

2021年に発表された「Singapore Green Plan 2030」は、この流れの最新章だ。

Singapore Green Plan 2030の主な目標

シンガポール政府が発表したGreen Plan 2030は、5つの柱を軸にしている。

1. City in Nature(自然の中の都市) 2030年までに、シンガポール全住民の90%が公園・緑地から500m以内に住む状況を目指す。公園面積の拡大と緑化インフラの整備が主な施策だ。

2. Energy Reset(エネルギー転換) 2030年までに再生可能エネルギーの割合を少なくとも2GWpに拡大。太陽光パネルの設置義務化・拡大が中心施策で、HDB(組合住宅)の屋上・路上の駐車場屋根等にパネルを設置する計画が進んでいる。

3. Green Economy(グリーン経済) シンガポールをアジアのカーボンサービス・グリーン金融のハブとして位置づける。炭素クレジット取引所(Climate Impact X)がすでに稼働している。

4. Sustainable Living(持続可能な生活) ゴミのゼロランドフィル(2035年まで)を目標に、リサイクル率の向上と食品廃棄物削減が施策の柱だ。2023年からは使い捨て食器への課金(Disposable Carrier Bag Charge)が導入されている。

5. Green Government(政府の脱炭素化) 2035年までに公共部門の炭素排出量を2017年比65%削減する目標。

在住者が感じる変化

日常生活レベルで感じられる変化をいくつか挙げると:

スーパーの袋の有料化: 2023年7月から、大手小売り(FairPrice、Cold Storage等)でレジ袋が有料(SGD0.05/枚、約5.75円)になった。エコバッグを持参する習慣が定着しつつある

電気自動車(EV)の普及: シンガポール政府は2030年以降の新車販売を全てクリーンエネルギー車(EV・ハイブリッド)にする目標を設定している。市内の充電インフラ整備も進んでいる

プラスチック削減: 環境省(NEA)がプラスチックごみの削減プログラムを推進。コーヒーショップ(Kopitiam)でストローを求めると断られることもある

日本との比較

日本と比較した場合、シンガポールの環境政策の特徴は「政府主導の強制力の強さ」だ。

日本では多くの環境施策が「お願い・インセンティブ」ベースで進むのに対し、シンガポールは課税・規制を積極的に使う。レジ袋の有料化も、日本では2020年の法改正で小売店に義務化されたが、シンガポールは直接消費者への課金という形をとった。

一方で、市民の環境意識が政策に追いついていない側面もある。「リサイクルBIN(分別回収ボックス)に何でも入れてしまう」問題は継続的な課題として政府も認めている。

シンガポールに住んで感じるのは、「街がきれい」という印象が環境政策と一体になっていることだ。清潔さは市民マナーだけでなく、制度・インフラ・罰則の組み合わせで維持されている。Green Plan 2030はその延長線上にある。

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