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駐在員と現地採用の給与格差——シンガポールの「二重価格構造」を読む

シンガポールでは同じ職種でも、駐在員と現地採用(ローカル採用)で給与・待遇が大きく異なります。その構造的な理由と現状を解説します。

2026-04-12
給与駐在員現地採用キャリア

この記事の日本円換算は、1SGD≒115円で計算しています(2026年4月時点)。

シンガポールで同じ仕事をしているのに、年収が2〜3倍違うという状況が普通に存在する。駐在員(expatriate)と現地採用者(local hire)の格差は、制度設計上の問題ではなく、雇用形態の違いから生まれる構造的な差だ。

駐在員パッケージの内訳

日本企業から送り込まれる駐在員の場合、給与に加えて多くの企業が以下の手当を付ける。

手当の種類相場
住宅手当月5,000〜15,000SGD(約57万5,000〜172万5,000円)
学校手当子ども1人あたり年30,000〜60,000SGD
帰国費用年1〜2回分の往復航空券
赴任・帰任引っ越し費用全額会社負担
硬直給与日本の給与+現地調整給

住宅手当だけで月8,000SGD(約92万円)が支給されるケースは珍しくない。これだけで現地採用のマネージャー職の月給に匹敵する。

現地採用の現実

一方、シンガポールで現地採用として雇われた場合(日本人も含む)、パッケージは大幅に異なる。

シンガポールの労働省(MOM)が公表する賃金データによると、2023年の中央値月収は約4,700SGD(約54万500円)。これはシンガポール人・PR・外国人全体を含む数字だ。日本人が現地採用でEPを取得するには最低月5,000SGD(約57万5,000円)の基本給が必要(EP取得条件)。

住宅手当なし、学費補助なし、帰国費用なし。これが現地採用の標準だ。

「同じ仕事、なぜ違う?」

この格差に対して、現地採用者から不満の声が上がることは珍しくない。しかし構造的に見ると、駐在員は「本社の要員として一時的に派遣されている存在」であり、帰国後の生活コストや日本での継続的な社会保障負担を考慮すると、単純比較は難しい。

問題になりやすいのは、「駐在員の役割を実質的に担いながら現地採用扱い」というケースだ。日本人が現地採用でシンガポールに残り、責任は駐在員と同等なのに給与は3分の1、というパターンは実際に存在する。

シンガポール人の視点

シンガポール人の間でも、外国人EP保持者と自国民の給与水準の差は議題になることがある。政府はFair Consideration Framework(FCF)を設け、企業に対してシンガポール人・PRへの採用機会を優先するよう求めている。しかし高度な技能を持つ外国人の雇用は引き続き認められており、完全な均等化は意図されていない。

在住日本人がよく直面する問題

「帯同家族として来たが、せっかくなので働きたい」という配偶者のケースでは、現地採用での就労が選択肢になる。その場合の年収水準は月5,000〜8,000SGDが現実的なラインだ。住宅手当がない状態でのシンガポール生活は、駐在員家庭の感覚とは全く異なるコスト感になる。

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